
金(ゴールド)を安全資産として買っている投資家にとって、見逃せないニュースが飛び込んできました。2025年11月下旬、投資銀行ジェフリーズが公表した分析により、仮想通貨(暗号資産)最大手のテザー社が9月末時点で116トンもの金を保有していたことが明らかになったのです。この規模は、韓国やハンガリーといった中小規模の中央銀行の保有量に匹敵します。金(ゴールド)価格が今年56%も急騰する中、その背後には仮想通貨企業の存在があった可能性が浮上しています。さらに追い打ちをかけるように、S&Pグローバルがテザーの主力ステーブルコインUSDTを最低評価に格下げし、ブロックチェーン分析企業グラスノードはビットコインとUSDTの間に「強い負の相関」があるという分析結果を発表しました。一体何が起きているのでしょうか?
本記事で分かること
- テザー社の116トンゴールド保有の実態と市場への影響
- S&P格下げが指摘する透明性と開示の問題
- ビットコインとUSDTの逆相関関係の意味

テザーが中小国の中央銀行クラスに!116トンのゴールド保有が明らかに

第3四半期だけで26トンを購入
投資銀行ジェフリーズの分析によると、テザー社は2025年第3四半期(7月~9月)だけで約26トンの金(ゴールド)を購入しました。これは同期間における世界の金需要の約2%、判明している中央銀行の購入量の約12%に相当する規模です。
ロイターの報道によれば、9月30日時点でテザー社が保有するゴールドは116トン、時価約140億ドルに達しています。ジェフリーズはこれを「大手中央銀行を除けば単一の保有者として最大規模」と指摘し、韓国、ハンガリー、ギリシャといった中小規模の国々の中央銀行が保有する金の量に匹敵すると分析しています。
Reuters 2025/11/25|Jefferies(投資銀行)アナリストレポート
金(ゴールド)価格急騰との関連性は?
ゴールド価格は2025年、記録的な56%の上昇を見せました。その背景には二つの大きな波がありました。
| 時期 | 上昇幅 | 主な要因 | ドルの動き |
|---|---|---|---|
| 1~4月 | 約1,000ドル/オンス | 関税ショック懸念 | 10%下落 |
| 8月半ば~10月半ば | 約1,000ドル/オンス | 複合的要因(投資需要増など) | 変動なし |
ジェフリーズのアナリストは、第2の波の上昇時期がテザーのゴールド購入加速と重なっていることに注目しています。
同社のレポートでは
「テザーのゴールド需要は短期的な供給のひっ迫をもたらし、市場心理に影響を与えた可能性がある。それが投機的な資金流入を促した可能性も考えられる」
と慎重に分析しています。
ただし、ロイターは「ゴールド価格上昇の要因は多岐にわたり、中央銀行の購入(第2・第3四半期で各約220トン)、ETFへの資金流入、地政学的リスクなども含まれる」と指摘しており、テザーの購入が唯一の要因とは言えないことを強調しています。
ゴールド保有の内訳と今後の見通し
テザー社のゴールド保有の内訳は以下の通りです(2025年9月30日時点)。
- USDT準備資産用の金:104トン(準備資産の約7%)
- XAUt(金連動トークン)用の金:12トン
- 合計:116トン(時価約140億ドル)
ジェフリーズは投資家へのヒアリングに基づき、テザーが今後さらに約100トンのゴールドを購入する計画があると推定しています。テザーの2025年の年間利益は約150億ドルに達する見込みで、ゴールド購入を継続する資金力は十分にあるとみられます。
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S&Pが最低評価に格下げ!透明性と開示の問題を指摘
評価「5(弱い)」への引き下げ
2025年11月26日、格付け会社S&Pグローバル・レーティングがUSDTの「ステーブルコイン安定性評価」を最低ランクの「5(弱い)」に引き下げました。これまでの「4(制約的)」から、さらに1段階の格下げです。
CoinPostの報道によると、S&Pはこの評価について「過去数年間やこの1年間を見るとUSDTの価値は比較的安定している」としつつも、準備資産の構成と情報開示の透明性に懸念を表明しています。
⚠️重要な注意点: この格下げは「USDTが直ちに破綻する」という意味ではありません。S&Pは主に監督体制と開示の問題を重視しており、潜在的なリスクを評価したものです。
Reuters 2025/11/26|S&P Global Ratings公式評価
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S&Pが指摘する主要な懸念事項
1. 高リスク資産の比率上昇
2025年9月30日時点で、USDTの準備資産に占める高リスク資産(ビットコイン、ゴールド、担保付きローン、社債など)の割合が24%に達しました。S&Pは特にビットコイン保有に注目し、以下の点を指摘しています。
- ビットコインが流通するUSDTの約5.6%を占める
- 準備資産の過剰担保マージンは3.9%
- ビットコイン価格が大幅下落した場合、過剰担保マージンを超える損失が発生するリスク
| 資産区分 | 推定比率 | リスク特性 |
|---|---|---|
| 米国債・現金同等物 | 約76% | 低リスク・高流動性 |
| ビットコイン | 約5.6% | 高ボラティリティ |
| 金(ゴールド) | 約7% | 中程度のボラティリティ |
| その他高リスク資産 | 約11.4% | 信用リスク・流動性リスク |
2. 情報開示と透明性の不足
CoinDesk Japanによると、S&Pは以下の透明性の問題を挙げています。
- カストディアン(資産保管機関)に関する詳細情報の不足
- 取引相手方や銀行口座の信用力に関する情報の限定
- リスク管理方針の不透明性
- 発行体破綻時の資産分別管理の仕組みの不明確さ
3. 複合的リスクシナリオへの懸念
S&Pは「ビットコインと他の高リスク資産の価値が同時に下落した場合、裏付け資産が一時的に不足する可能性がある」と指摘していますが、これは極端なストレスシナリオでの話であり、通常時の運営に問題があるという評価ではありません。
テザーCEOの反論
この格下げに対し、テザー社のパオロ・アルドイノCEOはX(旧Twitter)で迅速に反応しました。
「伝統的な金融機関向けに構築された古い評価モデルは、投資適格の格付けを与えられていたにもかかわらず破綻した企業に投資家が資金を投じる事態を招いてきた」
と批判。さらに、以下の点を強調しています。
- テザー社は焦げ付きのない裏付け資産を持つ過剰資本企業
- 2025年は100億ドル以上の利益を計上見込み
- 流通するUSDTは米国債と米ドルで完全に裏付けられている
- ビットコインとゴールドは「過剰資産」であり、USDTの直接的な裏付けではない
グラスノードの分析:ビットコインとUSDTの「強い負の相関」

過去2年間のデータが示す逆相関パターン
ブロックチェーン分析企業グラスノードは11月26日、過去2年間(2023年12月以降)のデータ分析を公開し、ビットコイン価格とUSDTの取引所純流入量の間に「強い負の相関」が観測されたと報告しました。
Cointelegraphの報道によると、この分析は過去の観測データに基づくパターン認識であり、将来も同様の相関が続くことを保証するものではありません。市場環境の変化により、この関係性は変わる可能性があります。
Revisiting this cycle’s USDT netflow to exchanges, we find a strong negative correlation with BTC’s mid-term performance.
During euphoric phases, USDT typically flows out at –$100M to –$200M/day as investors lock in profits.
At the $126K peak, net outflows reached >$220M… pic.twitter.com/AOsHf8dQ2p— glassnode (@glassnode) November 26, 2025
観測された市場パターン
グラスノードの分析では、以下のパターンが確認されました。
【ビットコイン上昇局面】
- USDTが取引所から純流出(1日1億~2億ドル規模)
- 10月の12万6,000ドルピーク時:30日移動平均で2億2,000万ドル超の純流出
- これは投資家の利益確定行動を示唆
【現在の状況】
- USDTフローが再びプラス(純流入)に転じている
- 利益確定の圧力が緩和されつつある可能性
- 新たな買い圧力が戻りつつあるとの見方も
この相関の意味するところ
この負の相関は、以下のような市場メカニズムを反映している可能性があります。
- 上昇局面:投資家がビットコインをUSDTに換金(利確)→ USDTが取引所外へ移動
- 調整局面:投資家がUSDTでビットコインを購入準備→ USDTが取引所に流入
⚠️重要な留意点: これは過去のデータに基づく観測であり、予測ツールとして機能することを保証するものではありません。2025年秋のビットコイン急落(6週間で約33%下落)では、この相関関係が市場分析の参考材料となりましたが、相場環境が変われば関係性も変化する可能性があります。
取引所への純流入・純流出とは?
取引所への純流入とは、取引所に入金される仮想通貨の量が出金される量を上回ることです。USDTの純流出は、投資家が取引所から資金を引き出している(売却して利益を確定し、安全に保管している)ことを示唆します。ただし、これは複数の解釈が可能なデータであり、単一の結論を導くものではありません。
GENIUS法と準備資産の規制枠組み
米国初の包括的ステーブルコイン規制
2025年7月、米国で「GENIUS法」が成立しました。この法律は、ステーブルコイン業界に初の包括的な連邦規制フレームワークを提供するものです。
ホワイトハウスの公式発表によると、GENIUS法は以下を要求しています。
- 100%の準備資産による裏付け
- 高品質流動資産(HQLA)による準備:米ドル現金、短期米国債など
- 月次の準備資産構成の公開開示
- 最低50%は現金または翌日物預金で保持
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ゴールドの取り扱いについて
GENIUS法は準備資産として「高品質流動資産(米ドル、短期国債)」を要求していますが、ゴールドを明示的に禁止しているわけではありません。ただし、法律が定める高品質流動資産(HQLA)のリストにゴールドは含まれていないため、 法律に準拠するステーブルコインでは、準備資産としてゴールドを使用することは実質的に認められません。
テザー社は既に、GENIUS法に準拠した新しいステーブルコイン「USAT」の発行を発表しており、USATでは金を準備資産から除外する計画です。一方、既存のUSDTについては、テザー社は「ゴールドとビットコインは過剰資産であり、USDT自体は米国債と米ドルで完全に裏付けられている」と主張しています。
ゴールド市場と仮想通貨の複雑な関係
異なる「安全資産」の本質
ゴールドとビットコインは「デジタルゴールド」という文脈でしばしば比較されますが、実際の市場での振る舞いは大きく異なります。
| 特徴 | 金(ゴールド) | ビットコイン |
|---|---|---|
| 歴史 | 数千年の価値保存の実績 | 約15年の歴史 |
| 年間価格変動 | 通常±10~20% | ±50%以上も珍しくない |
| リスク回避局面 | 上昇する傾向 | ハイテク株と連動して下落する傾向 |
| 中央銀行の保有 | 世界中で広く保有(約3.5万トン) | ほぼゼロ(一部の国で実験的保有) |
| 2025年の動き | +56%の上昇 | 10月ピーク後、11月に調整 |
ステーブルコイン市場がゴールド市場に与えうる影響
ロイターのアナリストは、以下のようなリスクシナリオを指摘しています(ただし、これは可能性の指摘であり、確定的な予測ではありません)。
【潜在的リスク】
- ステーブルコインへの大規模な償還要求が発生した場合
- テザーがゴールドを市場で売却せざるを得なくなる可能性
- ゴールド市場に仮想通貨市場のボラティリティが波及するリスク
【現実の複雑性】
- テザーのゴールド保有116トンは、世界のゴールド市場(年間需要約4,500トン)の約2.6%
- 中央銀行の合計保有(約3.5万トン)と比較すれば小規模
- 短期的な価格影響はありえるが、長期的な構造変化とは限らない
市場専門家の見解
Kitco Newsによると、ジェフリーズは「テザーの継続的な購入が今後数年間、ゴールド価格を下支えする可能性がある」と分析していますが、同時に「市場環境の変化により、この見通しは変わりうる」とも付け加えています。
一方、ロイターのコラムニストは「ゴールドを買って債務バブルから逃れようとしていた投資家は、ゴールド自体が新たな投機的性質を帯びているのではないかと自問する必要があるかもしれない」と指摘していますが、これは懸念の提起であり、断定ではありません。
まとめ:複雑に絡み合う市場の新時代
テザー社の116トンゴールド保有、S&PによるUSDT格下げ、そしてグラスノードが観測したビットコインとUSDTの負の相関—これら一連の出来事は、ゴールド市場、ステーブルコイン市場、暗号資産市場が複雑に相互作用する新時代の到来を示唆しています。
投資家にとって重要なのは、これらの情報を総合的に判断し、リスクを適切に管理することです。一次ソース(ジェフリーズのレポート原文、S&Pの評価詳細、グラスノードの分析手法)を確認することで、より深い理解が得られるでしょう。
ゴールド、ステーブルコイン、仮想通貨市場の関係性は今後も変化し続けます。断定的な判断を避け、複数の情報源から継続的に情報を収集することが賢明です。
重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。仮想通貨は価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。レバレッジ取引は特にリスクが高く、資金を全て失う可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。必ず信頼できる情報源を元にし、自分自身で十分なリサーチを行いましょう
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