
2025年11月26日、金融庁の金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」第6回会合で、暗号資産規制を現行の「資金決済法」から「金融商品取引法(金商法)」へ移行させる報告書案が公表されました。これは日本の仮想通貨(暗号資産)業界にとって歴史的な転換点となる可能性を秘めています。しかし報道を詳しく見ると、「交換業者の事業継続性」「インサイダー取引規制の実効性」「情報開示の実現可能性」という3つの大きな課題が浮かび上がってきます。今回は、報告書案の内容と報道を整理しながら、本当の課題を徹底解説します。
本記事で分かること
- 資金決済法から金商法への移行で何が変わる可能性があるのか
- 報告書案で示された課題と今後の検討事項
- 今後のスケジュール

「決済手段」から「金融商品」へ──8年ぶりの法体系見直し

2017年から続いた資金決済法時代
2017年4月、日本は世界に先駆けて仮想通貨(暗号資産)に関する法規制を導入しました。当時の位置づけは「決済手段」であり、規制の根拠法は「資金決済に関する法律(資金決済法)」でした。
しかし、あれから8年。現実は大きく変わりました。
暗号資産の現状(2025年9月時点)
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 国内口座開設数 | 延べ1,300万口座超 |
| 利用者預託金残高 | 5兆円以上 |
| 保有者の取引動機 | 86.6%が「長期的な値上がり期待」 |
| 保有者の所得層 | 約7割が年収700万円未満 |
出典: 金融庁報告書案、日本暗号資産等取引業協会
決済手段としての利用は一部にとどまり、投資対象化が進展しているのが実態です。
金商法移行で変わる可能性があること
2025年11月26日、金融庁の金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」第6回会合で、暗号資産規制を現行の「資金決済法」から「金融商品取引法(金商法)」へ移行させる報告書案が公表されました。
この報告書案(正式名称:「金融審議会 暗号資産制度に関するワーキング・グループ報告(案)」)では、暗号資産を金融商品取引法の規制対象とする方向性が示されています。ただし、具体的な制度設計は今後の法案作成段階で決まります。
金商法移行で想定される主な変更点
| 項目 | 現行(資金決済法) | 報告書案の方向性 |
|---|---|---|
| 法的位置づけ | 決済手段 | 金融商品として規制 |
| 情報開示義務 | 自主規制レベル | 法定開示義務の導入を検討 |
| インサイダー取引規制 | なし | 導入の方向性 |
| 課徴金制度 | なし | 導入を検討 |
| 無登録業者への罰則 | 3年以下の懲役/300万円以下の罰金 | 強化の方向性(金商法並み) |
| 税制 | 総合課税(最大55%) | 報告書案には言及なし(今後の検討課題) |
出典: 金融庁報告書案
👉:第5回会合の内容はこちらの記事で【最新ニュース】金融庁3メガバンクのステーブルコイン実証実験を正式支援!決済高度化へ新組織発足
課題その1:交換業者の事業継続性──具体策は業界任せ?
報告書案で指摘された「事業継続性」
報告書案では、暗号資産交換業者の破綻リスクへの対応として「事業継続性の確保」が課題として挙げられています。過去のマウントゴックス事件(2014年)、コインチェック事件(2018年)、そして海外のFTX破綻(2022年)など、交換業者の破綻や不正流出事案が相次いでいることが背景にあります。
報告書案の記述(要旨)
「暗号資産業界が一丸となって、より強固な体制整備を行う必要がある」
出典: CoinDesk Japan
負債準備金制度は報告書案に含まれていない
⚠️重要な注意点: 複数メディアが報じている「負債準備金の積み立て義務化」は、今回の報告書案には明記されていません。
11月25日の日本経済新聞や海外メディア(CoinDesk、Bloomberg等)は、金融庁が交換業者に対して負債準備金の積み立てを義務化する方針だと報じています。しかし、これは別途検討されている施策であり、今回の金商法移行の報告書案とは別の動きです。
負債準備金制度に関する報道(参考情報)
- 目的: ハッキング、システム障害、破産による顧客損失を補償
- 報道されたスケジュール: 2026年の通常国会に法案提出の可能性
- 注意: 報告書案には具体的な記載なし
課題その2:インサイダー取引規制──実効性への疑問
報告書案で示されたインサイダー規制の方向性
報告書案には「不公正取引規制」の章があり、インサイダー取引規制の導入が検討されています。これは、株式市場と同様に、内部情報を利用した不正な売買を禁止するものです。
想定されるインサイダー取引規制の枠組み
| 規制項目 | 想定される内容(報告書案ベース) |
|---|---|
| 対象者 | 発行者関係者、交換業者の役職員、情報受領者など |
| 重要事実 | プロジェクトの重大な変更、提携、技術的問題など |
| 禁止行為 | 未公表の重要事実を知りながら暗号資産を売買すること |
| 罰則 | 金商法並みの刑事罰・課徴金の導入を検討 |
出典: 金融庁報告書案
しかし、執行には大きな困難が予想される
報告書案や識者の指摘でも、暗号資産へのインサイダー規制の実効性については課題が多いことが示されています。
インサイダー規制の執行が難しい理由
❌ 発行体が不明確: ビットコインやイーサリアムには「発行会社」が存在しない
❌ 匿名性・追跡困難: DEX(分散型取引所)での取引は追跡が困難
❌ 国境を越える取引: 海外取引所での取引を日本の法律で取り締まれるのか?
❌ 情報の非対称性: どの情報が「重要事実」に該当するのか不明確
参考:海外の事例
米国では2022年にNFTマーケットプレイス「OpenSea」の元従業員が、内部情報を利用したNFT取引でインサイダー取引罪で起訴された事例があります。ただし、これは発行者が明確なNFTのケースでした。
課題その3:情報開示義務──ホワイトペーパーの法制化は実現するか

報告書案は「情報提供規制」の強化を提案
報告書案には「情報提供規制」の章があり、新規販売時の情報提供や継続的な情報開示の強化が検討されています。現状、ホワイトペーパー(説明資料)は自主規制団体のルールでのみ求められており、法的義務ではありません。
現状のホワイトペーパーの問題点
❌ 内容が不明確で専門用語だらけ
❌ 実際のコードと記載内容が異なるケースあり
❌ 各銘柄間の比較可能性が乏しい
❌ 虚偽記載への罰則が弱い
報告書案では、こうした問題への対応として情報開示の法制化が示唆されていますが、具体的な罰則の内容や課徴金の水準は今後の法案設計次第です。
発行者が特定できないケースへの対応は未解決
株式の有価証券届出書は「発行会社」が作成しますが、暗号資産の場合、誰が発行者なのか不明確なケースが多数存在します。
発行者の特定が困難なケース
- ビットコイン: サトシ・ナカモトは匿名、現在は誰も管理していない
- イーサリアム: Ethereum Foundationが存在するが、法的な「発行者」ではない
- DeFiトークン: 分散型のため、特定の発行者が存在しない
こうしたケースへの対応は、報告書案でも今後の検討課題とされています。
👉:合わせて読みたい【仮想通貨】BTCCとは?安心できる海外取引所の特徴・使い方を解説【2025年版】
今後のスケジュール──法案化まではまだ時間がかかる
報告書案から法律施行までの一般的な流れ
今回公表された報告書案は、まだ「案」の段階です。法律として施行されるまでには、以下のような手続きが必要です。
想定される今後のスケジュール(一般的なケース)
| 時期(目安) | イベント |
|---|---|
| 2025年12月頃 | 金融審議会で報告書を正式承認(推測) |
| 2026年1月 | 通常国会召集 |
| 2026年1~6月頃 | 金融商品取引法改正案を国会提出・審議(可能性) |
| 2026年6月頃 | 法案成立(順調な場合) |
| 2027年4月頃 | 改正法施行(予想) |
⚠️重要な注意: 上記のスケジュールは、複数メディアの報道や一般的な法改正の流れから推測したものです。報告書案自体に具体的な時期は明記されていません。
分離課税(20%)への移行は報告書案に含まれていない
業界が強く要望している申告分離課税(20%)への移行については、今回の報告書案には言及がありません。
現在、暗号資産の利益は「雑所得」として総合課税の対象で、最大税率は55%(所得税45%+住民税10%)です。これが株式と同じ申告分離課税(20%)になれば、投資家にとって大きなメリットですが、税制は別途、財務省・国税庁との調整が必要であり、実現するかは不透明です。
分離課税実現のハードル
❌ 財務省・国税庁の税収減への懸念
❌ 「投機的な取引」への課税優遇への批判
❌ 他の金融商品との整合性
👉:合わせて読みたい【ニュース解説】金融庁、仮想通貨課税を「総合課税→分離課税」へ要望|2026年度改正が焦点
まとめ:報告書案は「スタート地点」に過ぎない
2025年11月26日の金融審議会報告書案公表は、確かに重要な一歩です。しかし、それは「ゴール」ではなく「スタート地点」に過ぎません。
本記事の重要ポイント
✅ 金商法移行の方向性が報告書案で示された
✅ しかし具体的な制度設計は今後の法案作成次第
✅ 負債準備金制度は報告書案には含まれていない(別途検討中)
✅ 分離課税は報告書案に言及なし(別途の課題)
重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。仮想通貨は価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。レバレッジ取引は特にリスクが高く、資金を全て失う可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。必ず信頼できる情報源を元にし、自分自身で十分なリサーチを行いましょう
海外取引所・DEX利用時の重要な注意事項
法的リスクについて
・日本居住者の利用は、完全に自己責任での利用となります
・資金保護や紛争解決において、日本の法的保護を受けられません
・エアドロップや取引利益は課税対象です。必ず税務申告を行ってください
🔐 招待コード:kimchan
📢 最新情報は各SNSでも発信中!
フォローしてお得なチャンスを逃さないでね✨

