2025年10月22日、金融庁が開催した「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」第4回会合で、仮想通貨(暗号資産)業界に大きな注目が集まる論点が示されました。 これまで規制の「グレーゾーン」とされてきたDEX(分散型取引所)について、今後の制度設計を「検討する」方針が打ち出されたのです。SNS上では「日本人はDEXが使えなくなる!」という不安の声が広がりましたが、実際の方向性は不安を打ち消す内容だと業界参加者が説明しています。

本記事で分かること
- 金融庁が示したのは「検討論点」
- 業界当事者が語る「本当の狙い」
- 利用者が知るべき「詐欺的DEX」との違い
- 今後の議論の方向性とスケジュール感
金融審議会が示した「DEX規制の検討論点」の内容
🇯🇵 2025年10月22日に開催された金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」第4回会合が行われました。昨日(10/22)に速報として概要のみ記載しましたが、その後、DEXに関する不安の声がSNS上で相次いだため、その内容を中心に深掘り記事としました。
👉:昨日(10/22)の記事【最新ニュース】日本企業が仮想通貨で世界進出ラッシュ!SBIもソニーも本気モード>【速報】本日10月22日、金融審議会で重要な議論
SNSで広がる「DEX禁止」の誤解
昨日(10/22)の「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」で、金融庁は従来規制の対象外とされてきたDEX(分散型取引所)について、今後の制度設計を「検討する」方針を示しました。
金融庁の資料では、DEXについて以下のように記載されています:
「現在の暗号資産交換業者に対する規制とは異なる、技術的性質に合わせた過不足のない規制のあり方について、今後、各国の規制やその運用動向も注視しながら、継続して検討を行うことが適当ではないか。」
つまり、「今後検討する」という議論の開始段階であり、具体的な規制内容は何も決まっていません。
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金融庁が指摘する「DEXの3つのリスク論点」
金融庁は、DEXについて以下の3つの主要リスク論点を検討事項として提示しています:
リスク分類 | 具体的な内容 |
---|---|
プロトコルリスク | スマートコントラクトの不備により、利用者が不測の損害を被る可能性 |
AML/CFTリスク | マネーロンダリング防止・テロ資金供与対策が適切に実施されず、不正利用されるリスク |
流動性リスク | 顧客資産を直接預からなくても、流動性供給者を通じて暗号資産が提供される点での懸念 |
金融庁は、これらのリスクに対応するため、「過不足のない規制のあり方を検討する必要がある」と指摘しました。 これは、過度な規制も不十分な規制も避け、技術的性質に合った適切な制度を模索するという姿勢を示しています。
金融庁が「確定」している対応は「注意喚起」のみ
金融庁資料によれば、現時点で確定している対応は以下の1点のみです:
「足下の対応としては、DEXを含め、日本で登録を受けていない業者での取引を行う場合に利用者が不測の損害を被るリスクを、行政や暗号資産交換業者等において、十分に周知することが適当ではないか。」
つまり、「リスクを利用者に周知する」という注意喚起が唯一の確定対応であり、それ以外の具体的な規制措置は全て「今後の検討事項」です。
金融庁|金融審議会「暗号資産制度に関するワーキング・グループ」(第4回) 議事次第(配布PDF資料あり)
オブザーバーが語る「DEX規制検討の本当の狙い」
岡部典孝氏:「DEX利用は憲法上保障された財産権」
JPYC代表取締役で、ブロックチェーン推進協会DeFi部会副部会長の岡部典孝氏は、金融審議会にオブザーバーとして参加しており、(旧Twitter)上で極めて重要な法的見解を示しています:
「DEXを自己責任自己運用の範囲で利用することは憲法上保障された国民の財産権であり、行政やましては単なる暗号資産交換業者等が禁止、制限することはできません。 せいぜいリスクの注意喚起をする位です。」
この発言は、DEX規制を考える上で極めて重要なポイントを指摘しています。
憲法上の財産権とは?
岡部氏はさらに、以下のように続けています:
「一方でDEXの中には反社会的勢力が詐欺目的で開設したもののDEXを名乗っているだけといったケースもあり、そのような営業は厳しく取り締まる必要があります。」
つまり、岡部氏の主張は以下のように整理できます:
DEXの種類 | 対応 |
---|---|
本来のDEX (自己責任で利用するプロトコル) |
憲法上保障された財産権 行政は禁止・制限できない リスクの注意喚起のみ |
詐欺的な「DEX」 (反社会的勢力が運営する中央集権的な詐欺サービス) |
厳しく取り締まる必要あり 投資家保護のため排除すべき |

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荒澤文寛氏:「排除ではなく透明性を持った共存」
ブロックチェーン推進協会DeFi部会長でエックスウィングループ代表の荒澤文寛氏も、オブザーバーとして金融審議会に参加しており、今回の会合について上で以下のように総括しています:
「金融審議会(第4回)、今回も白熱した議論でしたね。今日はDEXの話まで踏み込んでいたのは興味深かったです。DEXを『無登録取引の温床』として単に危険視する立場と、『ブロックチェーン技術の健全な進化として制度的に取り込むべき』という立場の両方が提示されていました。」
荒澤氏の投稿から読み取れる重要なポイントは以下の通りです:
- DEXを排除する方向ではない:禁止ではなく、制度的に取り込む方向で議論
- 透明性・説明責任・ユーザー保護:この3つを軸にした制度設計を検討
- スマートコントラクト監査:プロトコルの安全性を第三者が検証する仕組みの検討
- AML対応の新基準:マネーロンダリング対策を技術的に実現する方法の検討
- 世界の流れに合致:他国の規制動向とも整合性を取る方向
⚠️重要な注意点:
荒澤氏の投稿にある「透明性・説明責任・ユーザー保護の3点を軸とした制度設計」という表現は、荒澤氏自身による会合内容の解釈・要約です。金融庁の公式資料に「透明性・説明責任・ユーザー保護」という3つの軸が明記されているわけではありません。ただし、金融庁資料の「過不足のない規制」「投資者保護」「AML/CFT対策」などの記載内容を総合すると、荒澤氏の解釈は妥当であると考えられます。
さらに荒澤氏は、このように続けています:
「JPYCなどのステーブルコインとDeFiは鶏と卵の関係。ステーブルコインが先行する中で、DeFiの法整備を、『イノベーション推進 × 投資家保護』で進めて貰いたいです。 ブロックチェーン推進協会DeFi部会長として、副部会長の岡部さんと共に、政府、金融庁と対話、全面協力をしていきます。 日本のために」
つまり、業界団体は金融庁と対立するのではなく、オブザーバーとして建設的な対話を通じて「イノベーション推進」と「投資家保護」の両立を目指しているのです。

利用者が知るべき「本物」と「詐欺的」DEXの見分け方
「DEXを名乗る詐欺」が増加している実態
岡部氏が指摘する「反社会的勢力が詐欺目的で開設したもののDEXを名乗っているだけ」というケースは、実際に増加しています。
詐欺的な「DEXもどき」の特徴:
- 運営者が明確に存在し、中央集権的に管理されている
- 「高利回り保証」「必ず儲かる」などの誇大広告
- 出金制限や突然のサービス停止
- スマートコントラクトのコードが公開されていない
- 監査を受けていない、または監査結果が不透明
一方、本物のDEXの特徴は以下の通りです:
項目 | 本物のDEX | 詐欺的DEX |
---|---|---|
管理者 | 不在(分散型) | 明確に存在(中央集権) |
コード公開 | オープンソース | 非公開または不透明 |
監査 | 第三者機関による監査済み | 監査なし、または偽装 |
資産管理 | ユーザー自身が秘密鍵を管理 | 運営者が管理(預託型) |
広告 | 現実的なリスク説明 | 「必ず儲かる」等の誇大広告 |
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金融庁が取り締まるべきは「詐欺的DEX」
岡部氏の指摘の本質は、「本物のDEX」と「詐欺的なDEXもどき」を区別し、後者を厳しく取り締まるべきということ。
これは金融庁の検討方針とも一致しています。金融庁は「過不足のない規制」を強調しており、憲法上保障された財産権を尊重しながら、詐欺的な業者から投資家を守る制度設計を模索しています。

「UI提供者」規制の検討
DEXに接続する「入口」を整理する検討
今回の金融審議会で特に注目を集めたのが、DEXに接続するUI(ユーザーインターフェース)提供者への規制を検討する方向性です。
UI提供者とは?
なお、Uniswapなど海外の大手DEXプロトコルは、スマートコントラクトが監査済みでオープンソース化されており、むしろ「健全なDEXの例」として認識されていると考えられます。金融庁が取り締まるべきとしているのは、岡部氏が指摘する「詐欺的なDEXもどき」です。
金融庁の資料では、UI提供者に対して以下のような論点が示されています:
「DEXに接続するUIを提供する事業者に対しては、接続先のDEXに内在するリスク(プログラムの不備等)に応じた説明義務やAML/CFT対策等、リスクに応じた規制を課すことを念頭に、各国の規制動向を注視しながら、まずはかかるサービスの実態把握を深めていく必要があるのではないか。」
つまり、「まずは実態把握」という段階であり、具体的な規制内容は今後の検討課題です。重要なのは、DEXそのもの日本から利用不可にするのではなく、アクセス経路を透明化し、利用者が安全に利用できる環境を整える方向で検討が進んでいるという点です。

その他の検討事項
インサイダー取引規制:DEX取引も検討対象に
金融審議会では、仮想通貨のインサイダー取引規制についても検討する方向性が示されました。DEX取引もインサイダー規制の検討対象に含める方向性が示されたことが注目されます。
検討されている主なポイント:
- 発行者の破産情報、セキュリティリスク、新規上場情報などを対象
- 違反者には株式と同様の罰則(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)を検討
- 課徴金制度の導入も検討中
- ただし、DEXやP2P取引の規制には技術的な限界があるとの指摘も
銀行子会社の暗号資産取扱い:容認する方向で検討
銀行・保険会社による仮想通貨取扱いについても検討される方向性が示されました:
- 銀行本体:仮想通貨の発行・売買については慎重に検討
- 銀行グループ子会社:発行・売買・仲介・投資運用を認める方向で議論
この方向性により、三菱UFJ、三井住友、みずほの3メガバンクが共同で検討している円建てステーブルコインの発行計画が、法的根拠を得て加速する可能性があります。
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無登録業者への規制強化:刑事罰引き上げを検討
無登録業者に対する規制強化も検討される方向性が議論されました:
- 刑事罰の引き上げ:暗号資産を金商法の枠組みに移行することで、結果的に現行の資金決済法の「3年以下」から「5年以下」に引き上げられる方向で検討
- 緊急差し止め制度:証券取引等監視委員会が緊急で差し止めを行う仕組みの整備を検討
- 警告義務・送金目的確認:アンホステッド・ウォレットへの送金時の警告義務などを検討
この規制検討は、岡部氏が指摘する「反社会的勢力が詐欺目的で開設した」ような悪質な業者を取り締まることが主な目的です。本来のDEXやセルフカストディウォレットの利用を制限するものではありません。
法改正のスケジュール:具体的時期は未定
⚠️重要な注意点: 一部報道では「2026年通常国会での法改正を目指す」と記載されていますが、金融庁の公式資料には「2026年通常国会」という具体的時期の明記はありません。 あくまで報道ベースの情報であり、確定事項ではないことに注意が必要です。
今後の見通し(予想):
- 2025年内:各国の規制動向を注視しながら実態把握、リスク周知活動の強化、業界団体との対話継続
- 2026年以降:段階的に制度設計を具体化、スマートコントラクト監査基準の整備、AML対応の新基準策定

まとめ:「透明性を持った共存」を目指す日本のWeb3戦略
2025年10月22日の金融審議会で示されたDEX規制検討方針は、日本の仮想通貨・Web3産業にとって重要な転換点となる可能性があります。
しかし、その本質は「DEX締め出し」ではなく、「透明性・説明責任・ユーザー保護を軸とした共存」を目指す検討です。過去の教訓から、過度な規制がイノベーションを阻害するリスクも認識されており、「過不足のない規制」を目指す姿勢が明確です。
Web3の未来は、規制とイノベーションのバランスをどう取るかにかかっています。 そして今回の動きは、その「共存の道」を探る重要な第一歩と言えるでしょう。
投資家としては、過度に悲観的になる必要はありません。 冷静に情報を収集し、「確定事項」と「検討事項」を区別して理解し、詐欺的なプロジェクトを見極め、本来のDeFiエコシステムを賢く活用していきましょう。

重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。
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