
Googleが発表した量子チップ「Willow」が2024年12月、従来型スーパーコンピューターで10の25乗年かかる計算を5分で完了させました。そして2025年12月17日、ソラナ財団が量子耐性テストネットを稼働開始。一方でマイケル・セイラー氏は「量子コンピューターはビットコインを破壊するのではなく強化する」と発言し、イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は「2030年までに20%の確率で現行暗号が破られる」と警告しています。ブロックチェーンは本当に生き残れるのか?量子時代の生存戦略を徹底解説します。
本記事で分かること
- 量子脅威の実態と時間軸
- ソラナとビットコインの対策比較
- 2030年までの投資戦略

Googleの「Willow」が示した量子優位性──ブロックチェーンへの影響は?

量子コンピューターの性能が証明された瞬間
Googleが発表した量子チップ「Willow」は2024年12月9日、従来のスーパーコンピューターで10の25乗年(10セプティリオン年)かかる計算をわずか5分で完了させました。これは宇宙の年齢(約138億年)を遥かに超える計算を、コーヒーを淹れる時間で終わらせたことを意味します。
ただし重要なのは、この驚異的な性能は「Random Circuit Sampling(RCS)」という特定のベンチマークでの結果であることです。RCSは量子コンピューターの性能を測定する標準的な手法ですが、実用的な暗号解読とは異なります。
Google Quantum AIの創設者ハートムット・ネーヴェン氏は公式ブログで「Willowは有用な大規模量子コンピューター構築への重要な一歩」と述べつつも、「現在のところ、実世界の商業的に関連するアルゴリズムを実行する段階には達していない」と明言しています。
量子コンピューターとは?
従来のコンピューターが「0」か「1」のどちらかで計算するのに対し、量子コンピューターは「0と1を同時に表現」できる量子ビット(キュービット)を使います。これにより、特定の計算を爆発的に高速化できます。
ブロックチェーンの弱点:ECDSA暗号の限界
ビットコインチェーンやイーサリアムチェーンなど主要ブロックチェーンは、ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)で秘密鍵と公開鍵のペアを生成しています。この暗号方式は、従来型コンピューターでは「公開鍵から秘密鍵を逆算するのが事実上不可能」という前提で安全性が保たれてきました。
しかし、量子コンピューターのショアのアルゴリズムを用いれば、この「逆算不可能」な壁が理論的には崩れます。専門家の試算では、ECDSA暗号を破るには約37万のノイズのある物理量子ビット、8〜12時間が必要とされています。*
Willowの105量子ビットでは遠く及びませんが、技術進歩のペースが問題です。
*出典:Gidney (2025)およびGarn & Kan (2025)の研究に基づく試算。ANDUROレポート参照:The Quantum Shift
ECDSAとは?
ECDSA(楕円曲線デジタル署名アルゴリズム)は、 秘密鍵(あなただけが知っている暗証番号)と公開鍵(誰でも見られる口座番号のようなもの)のペアを作る技術です。秘密鍵で「署名」すれば、公開鍵で「本人確認」できる仕組み。従来のコンピューターでは公開鍵から秘密鍵を逆算するのに数十億年かかるため安全とされてきました。
ショアのアルゴリズムとは?
1994年に数学者ピーター・ショアが発見した量子アルゴリズム。従来のコンピューターでは何十億年もかかる「素因数分解」を、量子コンピューターなら数時間で解けることを証明しました。これが現在の暗号技術(RSA、ECDSA)の根幹を揺るがす脅威となっています。
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量子脅威の具体的リスク
- 公開鍵が露出しているアドレス: ビットコイン全供給量の約25%(約400〜600万BTC)が該当*(P2PKアドレス約170〜200万BTC、再利用アドレス約250万BTCなど)
- 攻撃の時間軸: トランザクション送信から承認までの数分間が攻撃チャンスとなってしまう
- 失われたコインのリスク: サトシ・ナカモトの初期アドレスなど、移動されていない古いコインが標的に
*出典:Deloitte分析(最新更新:2024年)、PostQuantum.com、複数の研究機関による試算。詳細:Deloitte - Quantum computers and the Bitcoin blockchain
| 項目 | 現状 | 量子時代 |
|---|---|---|
| ECDSA暗号の安全性 | 事実上安全 | 10年以内に破られる可能性 |
| 公開鍵露出アドレス | BTC供給量の25% | 攻撃対象に |
| 対策の必要性 | 認識段階 | 2030年までに必須 |
| 量子コンピューター性能 | 105量子ビット(Willow) | 暗号破壊には37万量子ビット必要 |
ソラナとビットコイン──量子対策の決定的な違い
ソラナの先手必勝戦略:ポスト量子暗号のテストネット
2025年12月17日、ソラナ財団はポスト量子暗号セキュリティ企業プロジェクト・イレブンと提携し、量子耐性テストネットの稼働を開始しました。これはメジャーブロックチェーンとしては最も早い実装例の一つです。
量子暗号とは?
「量子コンピューターでも破れない暗号技術」のこと。従来のECDSAやRSA暗号は量子コンピューターに弱いため、格子暗号やハッシュベース暗号など、量子耐性を持つ新しい暗号方式が開発されています。「ポスト(post)」は「〜の後」という意味で、「量子時代の後も使える暗号」という意味です。
ソラナチェーンのアプローチ
- NIST承認標準の採用: 米国国立標準技術研究所(NIST)が2024年8月13日に承認したFIPS 203, 204, 205を実装
- 実用性の検証: 「エンドツーエンドでの耐量子取引が実用的かつスケーラブル」と主張
- コスト vs セキュリティ: ポスト量子暗号は署名生成に時間がかかるが、検証は高速
ソラナの技術担当副社長マット・ソーグ氏は「我々の使命は、量子リスクから世界のデジタル資産を守ることだ」と述べ、2030年より早い段階での対策完了を目指しています。
NIST(米国国立標準技術研究所)とは?
アメリカ商務省傘下の研究機関で、技術標準を策定する権威ある組織です。NISTが「これが標準」と認めると、世界中の企業や政府がその技術を採用します。ポスト量子暗号の標準化は2016年から8年かけて慎重に進められました。
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ビットコインのジレンマ:技術 vs ガバナンス
一方、ビットコインチェーンは技術的には解決策があるにもかかわらず、ガバナンスの問題に直面しています。
ブロックチェーンのガバナンスとは?
ブロックチェーンは「中央管理者がいない分散型システム」のため、仕様変更には開発者、マイナー(採掘者)、取引所、ユーザーなど関係者全員の合意が必要です。この意思決定プロセスを「ガバナンス」と呼びます。ビットコインは特に保守的で、変更への合意形成が非常に困難です。
マイケル・セイラー氏の楽観論(2025年12月16日)
「量子コンピューターはビットコインを破壊するのではなく強化する。ネットワークがアップグレードされ、アクティブなコインは移行し、失われたコインは凍結される。セキュリティは向上し、供給量は減少する」
しかし、オンチェーン分析サービス「チェックオンチェーン」の創業者ジェームズ・チェック氏は反論しています。
ビットコインチェーンの3つの課題
- 合意形成の困難: 開発者、マイナー、取引所の圧倒的な合意が必要
- 古いアドレスの扱い: 量子耐性アドレスへ移行していないコインを「凍結」することに合意できるか
- パニックリスク: 未移行のコインが攻撃者に奪われ、市場に大量放出される恐れ
ソラナチェーンとビットコインチェーンの相違表
| 項目 | ソラナチェーン | ビットコインチェーン |
|---|---|---|
| 量子対策の開始時期 | 2025年12月17日(テストネット稼働) | 未定(議論段階) |
| 技術的解決策 | NIST標準の実装済み | 存在するが未採用 |
| 最大の障壁 | パフォーマンスコスト | ガバナンス(合意形成) |
| 対応予定時期 | 2028年頃 | 2030年が分水嶺 |
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投資家が知っておくべき「量子リスク」の時間軸──2030年問題とは何か

NISTの標準化が示す「準備の時」
NISTは3つのポスト量子暗号標準を、2024年8月13日に正式承認しました:
- FIPS 203: 格子暗号ベースの鍵交換・暗号化(ML-KEM)
- FIPS 204: 格子暗号ベースのデジタル署名(ML-DSA)
- FIPS 205: ハッシュベースのデジタル署名(SLH-DSA)
これにより、ブロックチェーン以外の金融システム、政府機関、クラウドインフラも量子耐性への移行を開始しています。
Cloudflareの2024年テストでは、FIPS 204は従来のEd25519より署名生成に時間がかかるが、実用レベルという結果が出ています。
ハッシュベース暗号とは?
ポスト量子暗号の代表的な方式です。格子暗号は高次元の幾何学的構造を利用し、量子コンピューターでも解くのが困難な「最短ベクトル問題」を基礎にしています。ハッシュベース暗号はハッシュ関数(一方向の変換)だけを使うシンプルな設計で、量子耐性が数学的に証明されています。
専門家の見解が示す「2030年分水嶺」
| 専門家 | 予測 |
|---|---|
| ヴィタリック・ブテリン(イーサリアム共同創設者) | 2030年までに20%の確率で暗号が破られる(2025年8月28日) |
| アダム・バック(Blockstream CEO) | ビットコインが量子脅威に直面するのは20〜40年後 |
| マイケル・セイラー(Strategy会長) | 量子技術はビットコインを強化する(2025年12月16日) |
| チャールズ・ホスキンソン(カルダノ創設者) | 量子脅威は過大評価されている(2025年12月) |
投資家への示唆
・短期(2025〜2027年):
量子リスクは価格に織り込まれていない → ボラティリティ増加の可能性
・中期(2028〜2030年):
ソラナチェーンなど先行対策組とビットコインチェーンの「技術格差」が顕在化
・長期(2030年以降):
量子耐性を持たないブロックチェーンは市場から淘汰される可能性
まとめ:量子時代のブロックチェーン──「破壊」ではなく「選別」が始まる
Google「Willow」発表と、2025年12月17日のソラナ財団による量子耐性テストネット稼働により、ブロックチェーンは「量子コンピューターにどう対応するか」という新たな競争軸に突入しました。
重要なのは、現時点で量子コンピューターがブロックチェーンを破壊する能力はないということです。Willowの105量子ビットは、ECDSA暗号を破るために必要な37万量子ビットには遠く及びません。
しかし、ヴィタリック・ブテリン氏の「2030年までに20%」という予測が示すのは、準備を始める時期は今だということです。
ソラナチェーンは先手を打ち、ビットコインチェーンはガバナンスの壁に直面しています。投資家にとって、量子リスクは「脅威」ではなく「ブロックチェーンの真の技術力を見極めるリトマス試験紙」です。
2030年までの5年間が、ブロックチェーンの「サバイバルレース」。量子耐性は新たな「生存条件」となります。
重要な投資リスク警告
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