2025年11月18日、世界的なインターネットインフラ企業Cloudflareで大規模障害が発生し、仮想通貨(暗号資産)取引所Coinbase、Krakenをはじめ、X（旧Twitter）、ChatGPTなど多数のサービスがアクセス障害に見舞われました。この事態により、「分散型」を標榜するWeb3業界が実は中央集権的なインフラに依存している構造的課題が改めて明らかになり、業界内で議論を呼んでいます。
本記事で分かること
- Cloudflare障害の詳細と仮想通貨業界への具体的影響
- Web3が直面する「フロントエンド依存」という構造的問題
- 解決策として期待されるDePINの可能性と注目銘柄
11月18日Cloudflare障害の全容──約6時間に及ぶ影響
出典：Cloudflare blog｜Cloudflare outage on November 18, 2025
障害発生から復旧までの詳細タイムライン
Cloudflare公式ブログの発表によると、UTC時間11月18日11:20（日本時間20:20）に障害が発生。Bot Management（ボット管理）システムの設定ファイルが通常の2倍のサイズに膨張し、システム全体に波及しました。
障害の時系列（UTC / 日本時間）
| UTC時刻 | 日本時間 | 状況 |
|---|---|---|
| 11:05 | 20:05 | データベースアクセス制御変更を展開 |
| 11:20 | 20:20 | 障害発生開始、HTTP 500エラー急増 |
| 11:28 | 20:28 | 顧客環境への影響が本格化 |
| 13:05 | 22:05 | Workers KV等のバイパス実装で一部軽減 |
| 14:30 | 23:30 | 主要な影響が解消 |
| 17:06 | 翌2:06 | 全システム完全復旧 |
Cloudflareとは？
Cloudflareは、ウェブサイトのセキュリティ強化や高速配信を提供するCDN（コンテンツ・デリバリー・ネットワーク）サービス。世界のウェブサイトの約20%が利用しており、DDoS攻撃対策や通信速度改善の業界標準となっています。
Cloudflare｜https://www.cloudflare.com/ja-jp/
影響を受けた主要サービス（フロントエンドアクセス障害）
今回の障害で重要な点は、影響はフロントエンド（ウェブインターフェース）へのアクセスに集中しており、ブロックチェーン本体やトランザクション処理そのものは継続稼働していたことです。
仮想通貨関連サービス
- Coinbase（コインベース）
- Kraken（クラーケン）
- BitMEX（ビットメックス）
- Blockchain.com
- Ledger
- Etherscan（イーサスキャン）
- Arbiscan（アービスキャン）
- Aave（アーベ）
- DefiLlama（デフィラマ）
その他の主要サービス
- X（旧Twitter）
- ChatGPT（OpenAI）
- Spotify
- Zoom
- WordPress
- League of Legends
Cloudflare公式発表：「2019年以来最悪の障害」
Cloudflare公式ブログでは今回の障害について、以下のように説明しています：
"This was not caused, directly or indirectly, by a cyber attack or malicious activity of any kind." （この問題は、サイバー攻撃や悪意ある活動によるものでは一切ありません）
障害の技術的原因
- データベース権限管理の変更作業中
- Bot Management用設定ファイルが重複データにより2倍に肥大化
- システムが想定サイズを超え、処理エラーが連鎖
- 全世界のCloudflareサーバーに不良設定ファイルが配信
Web3が直面する「分散型という名の中央依存」問題
専門家が指摘する構造的課題
今回の障害を受けて、暗号資産業界の専門家たちは「Web3の分散化は理想であり、現実はインフラ依存」という構造的問題を改めて指摘しています。
CCN.comの分析記事では、専門家のコメントとして以下が引用されています：
"Experts say the outages underscore a troubling reality: the internet's overreliance on single points of failure" （専門家は、この障害がインターネットの単一障害点への過度な依存という憂慮すべき現実を浮き彫りにしたと指摘する）
🔽 典型的なWeb3アプリケーションの依存構造
| レイヤー | 実態 | 中央集権度 |
|---|---|---|
| ブロックチェーン本体 | 分散型ノードで稼働 | ✅ 低い |
| RPCノード接続 | Infura、Alchemy等に依存 | ⚠️ 高い |
| フロントエンド | AWS、Azure等でホスティング | ⚠️ 高い |
| CDN・DDoS対策 | Cloudflareに依存 | ⚠️ 高い |
| ドメイン管理 | 従来のDNSシステム | ⚠️ 高い |
過去にも繰り返された同様の問題
実は、中央集権的インフラへの依存が引き起こす問題は今回が初めてではありません。
Web3サービスに影響を与えた主要インフラ障害
| 時期 | 障害元 | Web3への影響 |
|---|---|---|
| 2024年以前 | AWS複数回の障害 | 多数のDeFiプロトコルのフロントエンドダウン |
| 2025年10月 | AWS大規模障害 | Coinbase Base、Infura、Alchemy等がダウン |
| 2025年11月18日 | Cloudflare障害 | Coinbase、Kraken、Etherscan等アクセス不可 |
CryptoSlateの報道では、10月のAWS障害後のRedditスレッド「AWS outage just exposed how 'decentralized' Web3 really is（AWS障害がWeb3の本当の姿を暴露した）」が大きな話題となったことが紹介されています。
👉：2025年10月のAWSの詳細はこちら【重要ニュース深掘り】AWS障害で露呈したweb3や仮想通貨の矛盾｜分散化は幻想だったのか？
なぜWeb3は中央集権インフラに依存するのか
The Coin Academyの分析記事では、この矛盾について以下のように説明されています：
"Web3 may promise decentralization, autonomy, and resilience. However, a significant part of its public access still relies on centralized infrastructure" （Web3は分散化、自律性、レジリエンスを約束するが、公衆アクセスの重要部分は依然として中央集権的インフラに依存している）
依存が生まれる主な理由
❶ コストと利便性
・完全分散型インフラの構築・運用は高コスト
・AWS、Cloudflare等は安価で導入が容易
❷ ユーザー体験の優先
・完全分散型は通信速度が遅くなる傾向
・CDNによる高速化がユーザー満足度に直結
❸ 開発スピード重視
・スタートアップは市場投入速度を優先
・インフラ自体の分散化は後回しになりがち
❹ 技術的成熟度
・真の分散型インフラ技術はまだ発展途上
・実用レベルの代替手段が限定的
期待される解決策「DePIN」とは？注目プロジェクトを解説
DePIN（分散型物理インフラネットワーク）が注目される背景
今回のCloudflare障害を契機に、DePIN（Decentralized Physical Infrastructure Network）への関心が業界内で急速に高まっています。
CoinDeskの報道では、以下のように指摘されています：
"Some in the crypto world have called for DePIN to be more widely adopted to combat internet outage issues" （仮想通貨業界の一部では、インターネット障害問題に対抗するためDePINのより広範な採用を求める声が上がっている）
DePINとは？
DePINは、Decentralized Physical Infrastructure Networkの略。ブロックチェーン技術を使い、ストレージ・通信・計算処理などの物理インフラを分散型ネットワークで運営する仕組みです。個人が自宅の機器を提供してネットワークに貢献し、対価としてトークンを受け取ります。Airbnb（宿泊）やUber（交通）のインフラ版と考えるとわかりやすいでしょう。
👉：合わせて読みたい【仮想通貨】分散型物理インフラネットワーク（DePIN）とは？WEB3.0時代の新たな革新技術
DePIN主要カテゴリーと代表プロジェクト
DePINプロジェクトは用途別に複数のカテゴリーに分類されます。
📁 分散型ストレージ
| プロジェクト | トークン | 主な用途 |
|---|---|---|
| Filecoin |  FIL |
大規模分散ストレージ |
| Arweave |  AR |
永久データ保存 |
Filecoinの詳細は👉：【仮想通貨】Filecoin（FIL）とは？AI時代に注目の分散型ストレージの実力と将来性
📡 分散型通信ネットワーク
| プロジェクト | トークン | 主な用途 |
|---|---|---|
| Helium |  HNT |
IoT・5Gネットワーク |
🖥️ 分散型コンピューティング
| プロジェクト | トークン | 主な用途 |
|---|---|---|
| Render Network |  RENDER |
3Dレンダリング処理 |
| Bittensor |  TAO |
AI計算処理 |
Render NetworkとBittensorの詳細は👉：【最新ニュース】AIが史上最大の投資需要を創出！年5000億ドルの衝撃予測で仮想通貨業界に激震
🌐 分散型データ処理
| プロジェクト | トークン | 主な用途 |
|---|---|---|
| The Graph |  GRT |
ブロックチェーンデータ検索 |
👉：合わせて読みたい【仮想通貨】BTCCとは？安心できる海外取引所の特徴・使い方を解説【2025年版】
注目のDePIN銘柄５選（可能性と展望）
各種業界レポートを参考に、注目されているDePINプロジェクトを紹介します。ただし、これらは将来の可能性を示すものであり、投資判断は自己責任でお願いします。
🥇 注目度1位：Bittensor（ TAO）
- 用途：AIコンピューティングの分散化
- 期待の背景：AI需要の急拡大に伴う分散型インフラへの関心
- 取引所：海外取引所中心（Binance、OKX等）
- 注意点：技術的に高度で、実用化には時間を要する可能性
🥈 注目度2位：Render Network（ RENDER）
- 用途：3Dレンダリング処理の分散化
- 期待の背景：映画・ゲーム業界での実績拡大中
- 取引所：国内外で取引可能
- 注意点：競合他社との差別化が課題
🥉 注目度3位：Filecoin（ FIL）
- 用途：分散型データストレージ
- 期待の背景：Web3データ保存の事実上の標準プラットフォーム
- 取引所：国内外で広く取引可能
- 注意点：大手クラウド（AWS S3等）との競争
注目度4位：Helium（ HNT）
- 用途：IoT・5G通信ネットワーク
- 期待の背景：2025年は北米・欧州・アジアで5G展開が加速予定
- 取引所：海外取引所中心
- 注意点：各国の通信規制への対応が必要
注目度5位：The Graph（ GRT）
- 用途：ブロックチェーンデータのインデックス化
- 期待の背景：DeFiプロトコルのインフラとして不可欠な存在
- 取引所：国内外で取引可能
- 注意点：競合プロジェクトの台頭
DePIN投資を検討する際の注意点
Grayscale Researchのレポート「The Real World: How DePIN Bridges Crypto Back to Physical Systems」では、DePINの可能性と共に、以下のような慎重な視点も示されています。
期待できる点
・実世界での実用性が高い
・インフラ需要は景気変動の影響を受けにくい
・長期的な成長ポテンシャル
投資リスク
・技術的成熟には時間を要する可能性
・既存の大手クラウドとの激しい競争
・トークン価格のボラティリティが高い
・各国の規制リスク
👉：合わせて読みたい【仮想通貨】edgeX完全ガイド｜安全性とリスク徹底比較！パーペチュアルDEX選び方決定版
まとめ：Web3の真の分散化へ向けた転換点
2025年11月18日のCloudflare障害は、Web3業界にとって重要な教訓となりました。「分散型」を掲げながらも中央集権的インフラに依存している現実が明らかになり、業界全体で真の分散化へ向けた議論が活発化しています。
この問題は一朝一夕には解決しません。しかし、今回の障害が真の分散化へ向けた議論のきっかけとなり、DePIN等の新しいインフラ技術の普及を加速させる可能性があります。
Grayscaleは「DePINは仮想通貨とリアル世界を橋渡しするユニークな新興分野」と評価しており、2025年以降の成長が期待されています。ただし、技術的成熟には時間を要するため、長期的な視点での注目が推奨されます。
重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。仮想通貨は価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。レバレッジ取引は特にリスクが高く、資金を全て失う可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。必ず信頼できる情報源を元にし、自分自身で十分なリサーチを行いましょう
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