
2025年11月13日、財務省が政府税制調査会に提出した資料で、重大な課題が明らかになりました。仮想通貨(暗号資産)を自己管理ウォレットに保管している場合、現行制度では差押えが困難――この法的・技術的な課題が、約5億円の申告漏れ、2.5億円の追徴課税を受けた事例とともに公式に提示されたのです。
本記事で分かること
- 財務省資料で示された差押え困難の具体的理由
- 5億円申告漏れ事例の全貌と制度上の課題
- 諸外国の法整備状況と今後の日本への影響

財務省が指摘した「現行制度では対応困難」という課題
政府税制調査会で提示された具体的事例
2025年11月13日に開催された「経済社会のデジタル化への対応と納税環境整備に関する専門家会合(第4回)」で、財務省は税務執行における深刻な課題を提示しました。
暗号資産ウォレット最強説🔒
財務省が、暗号資産の自己ウォレットは差押さえが不可能であることを暴露しました
投資家は暗号資産取引で得た5億円の利益を申告せず、2.5億円の追徴課税を食らいましたが、資産を自己ウォレットに移動していたため差押さえを逃れました
税金滞納は家宅捜査も不可能です pic.twitter.com/5I4MQWcXIh
— アンゴロウ@暗号資産 (@angorou7) November 13, 2025
【事例の概要】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申告漏れ額 | 約5億円 |
| 追徴課税額 | 約2.5億円(加算税含む) |
| 資産の保管方法 | 自己管理ウォレット |
| 結果 | 現行制度では差押え困難 |
この滞納者は税務調査で約2.5億円の追徴課税を受けましたが、その後暗号資産(仮想通貨)は値下がり。国税庁が「保有している暗号資産を売却して納付するよう」勧奨しても、「値上がりしてから売却する」と主張し、自主納付に応じませんでした。
財務省資料では「滞納者が自己で管理している場合には、そのような対応はできない」と明記されており、現行の国税徴収法・民事執行法では実効的な対応手段がないことが示されています。
なぜ差押えが困難なのか?2つの管理形態の違い

財務省資料では、仮想通貨の保管形態によって差押えの可否が明確に分かれることが示されています。
| 保管形態 | 管理者 | 差押え | 法的根拠 |
|---|---|---|---|
| ①交換業者経由 | 取引所が秘密鍵を管理 | ○ 可能 | 交換業者に対する債権として差押え可能 |
| ②自己管理 | 本人が秘密鍵を管理 | × 困難 | 現行制度上、実効的な対応手段がない |
秘密鍵とは?
仮想通貨を動かすための「パスワード」のようなもの。この秘密鍵を持っている人だけが、その仮想通貨を送金したり売却したりできます。取引所に預けている場合は取引所が管理、自己ウォレット(MetaMaskなど)の場合は自分で管理します。
差押えが困難な理由:制度的・技術的課題
自己管理ウォレットの差押えが困難な理由は、現行の法制度と技術的特性の両面にあります。
🔽 主な自己管理ウォレットの種類

画像記事:https://erovers.jp/2025/09/07/news0907/
【制度的な課題】
- 秘密鍵の開示を強制する法的手段がない:本人が任意に開示しない限り、現行法では資産へのアクセスを強制できない
- 民事執行・徴収手続の対象外:取引所のような第三者がいないため、債権差押えの手続きが使えない
- 国際的な執行の困難性:国境を越えた資産移転に対する法執行の限界
【技術的な特性】
- ブロックチェーンの分散性:中央管理者が存在せず、特定の組織に資産凍結を命じることができない
- 暗号技術による保護:秘密鍵なしでは、技術的に資産を移転できない
- PINコード等のセキュリティ:物理的な媒体(ハードウェアウォレット)も、PINコード入力が必要
財務省資料では、「地方税についても同様の課題がある」と明記されており、国税・地方税の両面で制度整備の必要性が示唆されています。
👉:合わせて読みたい【仮想通貨】史上初!指輪型のハードウェアウォレットのTANGEMを徹底解説!
世界各国はどう対応しているのか?
法整備が進む主要国の事例
日本法務省が2025年に公表した「諸外国における暗号資産の処分を防止するための制度・運用の概要」によれば、主要国では既に法整備が進んでいます。
| 国 | 制度 | 自己管理型への対応 |
|---|---|---|
| 🇬🇧 イギリス | 2002年犯罪収益法 第41条(7) | 裁判所が「警察等の当局の管理するウォレットに暗号資産を移転すること」を命令可能 |
| 🇺🇸 アメリカ | 押収令状(seizure warrant) | 保護命令では不十分な場合、押収令状により暗号資産を移転可能 |
| 🇩🇪 ドイツ | 刑事訴訟法 第111条b | 民事上の「差押え」により対応。保有者個人への命令送達で効力発生 |
| 🇫🇷 フランス | 刑事訴訟法典 第706-153条 | 「押収・没収資産管理回収機構(AGRASC)」の専用ウォレットに移転して執行 |
| 🇰🇷 韓国 | 麻薬類不法取引防止特例法 | 実務上、自己管理型については没収保全を行っていない |
🇬🇧 イギリスの事例
イギリスでは2023年の経済犯罪及び企業透明性法(Economic Crime and Corporate Transparency Act)により、犯罪収益法(POCA 2002)が改正され、無ホスト型(unhosted/自己管理型)ウォレットへの対応規定が整備されました。
具体的には、以下の権限が認められています:
- ハードウェアウォレットやシードフレーズのバックアップの捜索
- 暗号資産の「再構築(reconstitution)」手続き
- 没収対象財産の凍結・移転命令
ただし、これらの権限行使には裁判所の命令や一定の要件が必要であり、無制限に認められているわけではありません。
仮想通貨富豪が集まる国・地域の最新動向
一方で、仮想通貨投資家が多く移住している国・地域では、税制面での優遇と規制強化のバランスを取る動きが見られます。
Henley & Partners社の2025年レポートによれば、仮想通貨フレンドリー国家のトップ5は、シンガポール(1位)、香港(2位)、アメリカ(3位)、スイス(4位)、UAE(5位)となっています。日本人の仮想通貨富豪が実際に移住先として検討するケースが多い、シンガポールとUAE(ドバイ)を取り上げます。
🇸🇬 シンガポール:厳格な規制と透明性の両立
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 税制 | 個人のキャピタルゲイン課税なし(ただし事業として行う場合は課税対象) |
| 規制強化 | 2025年6月30日までに海外向けサービス停止を命令。国内ライセンス取得が必須に |
| AML対策 | 2024年8月マネーロンダリング防止法改正。法執行機関の権限拡大 |
| 資産差押え | 詐欺関連で2025年8月に約5千万USDT(約75億円)の凍結実績あり |
【ポイント】シンガポールは税制優遇を維持しつつも、違法行為には厳格に対応する姿勢を鮮明にしています。特に2024年の10億シンガポールドル規模のマネーロンダリング事件以降、規制が大幅に強化されました。
🇦🇪 UAE(ドバイ):タックスヘイブンから透明化へ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 税制 | 個人所得税なし。ただし法人は年商約1,500万円超で9%課税 |
| CARF参加 | 2025年9月にCARF多国間協定に署名。2027年から情報交換開始予定 |
| 規制強化 | 2025年9月施行の中央銀行法で、ライセンスなしのウォレット提供が刑事罰対象に |
| AML対策 | 2025年11月マネーロンダリング防止法改正(Federal Law No. 10 of 2025) |
【重要な変化】UAEは2025年9月、OECD主導のCARF(暗号資産等報告枠組み)に署名しました。これにより、2027年から仮想通貨取引情報が自動的に各国税務当局と共有される予定です。ドバイも透明化を進めているため、形式的な移住だけでは通用しなくなってきています。
タックスヘイブンとは?
タックスヘイブン(租税回避地)は、 税金がゼロまたは極めて低い国・地域のこと。従来はシンガポール、UAE、タイ、スイスなどが代表例でしたが、OECD主導の国際的な税務透明化により、「完全な非課税天国」は徐々に減少しています。
👉:合わせて読みたい【ニュース解説】タイの仮想通貨革命!観光にはTouristDigiPay、投資家には税制優遇!
OECD主導の国際的な情報交換の枠組み:CARF
2022年10月、OECD(経済協力開発機構)はCARF(Crypto-Asset Reporting Framework/暗号資産等報告枠組み)を策定しました。これは仮想通貨取引情報を国境を越えて自動的に交換できるようにする国際的な情報共有の枠組みです。
⚠️重要な注意点:CARFは取引情報の報告・交換を強化する制度であり、差押え権限を直接付与するものではありません。ただし、情報の透明化により税務当局の追及可能性が高まることは事実です。差押えの実行には、各国の国内法整備が別途必要となります。
【CARFの主要ポイント】
- 2023年11月:日本を含む48の国・地域が共同声明を発表
- 2025年9月:UAEがCARF多国間協定に署名
- 2026年1月1日:日本で制度施行・記録開始予定
- 2027年4月30日:事業者から国税庁への初回報告期限(日本)
- 2027年:国際的な初回情報交換の実施予定
【報告される取引情報】
- 交換取引(仮想通貨と法定通貨の売買)
- 暗号資産同士の交換
- 移転(取引所から個人ウォレットへの送金)
- リテール決済取引(仮想通貨での商品・サービス購入)
特に注目すべきは、「取引所から個人ウォレットへの送金」も報告対象となっている点です。これにより、自己管理ウォレットへの資金移動は記録として残ることになります。
OECDとは?
Organisation for Economic Co-operation and Development(経済協力開発機構)の略。先進国を中心とした38カ国が加盟する国際機関で、税制や経済政策の国際協調を進めています。過去にはオフショア銀行の秘密保持を崩壊させた「CRS(Common Reporting Standard)」も策定しました。
👉:合わせて読みたい【ニュース深掘り】2026年1月1日からCARF制度が始まる!海外取引を国税庁が把握する時代へ
今後の展開:制度整備の方向性

財務省の提示は「法整備の必要性」の示唆
財務省がこの問題を公式に提示したということは、将来的な法整備を検討していることを示唆しています。実際、資料では「地方税についても同様の課題がある」と明記されており、国税・地方税の両面で対応が必要とされています。
【今後予想されるシナリオ】
| 時期 | 予想される動き |
|---|---|
| 2026年1月~ | CARF施行により取引所からの出金記録が捕捉開始 |
| 2026年度税制改正 | 自己管理ウォレットへの対応を含む法改正の議論開始の可能性 |
| 2027年~ | 国際的な情報交換により海外取引所経由も把握可能に |
| 2028年以降 | 諸外国の事例を参考に差押え可能な制度整備の可能性 |
現時点で「抜け穴」として利用するリスク
現状、自己管理ウォレットへの差押えが困難であることは財務省も認めています。しかし、今この制度の隙間を意図的に利用することには、以下のような重大なリスクがあります。
リスク①:将来の法改正で対応される可能性
リスク②:刑事罰の対象となる可能性
リスク③:国際的な情報交換による把握
リスク④:社会的信用の喪失
以前の記事で詳しく解説していますが、2026年1月からの CARF制度施行により、海外取引所やDEX(分散型取引所)の利用状況も徐々に透明化されていきます。
「海外取引所なら申告しなくてもバレない」という時代は確実に終わりを迎えつつあります。
👉:合わせて読みたい【最新ニュース】Bybit 新規登録停止!今すぐ知りたい資産移動の4パターン【初心者必見】
正しい対応方法:今すぐやるべきこと
①過去の申告漏れがある場合:自主申告を検討
指摘される前に自主的に申告することで、ペナルティが軽減される可能性があります。
| 申告のタイミング | 無申告加算税 |
|---|---|
| 税務調査の通知前に自主申告 | 5% |
| 税務調査の通知後、調査前に申告 | 10~15% |
| 税務調査で指摘された後 | 15~30%(50万円超は20%、300万円超は30%) |
| 意図的な隠蔽と判断 | 重加算税 最大40% |
⚠️【重要】2025年中(CARF施行前)に対応を検討することで、より有利な条件になる可能性があります。
②取引履歴を正確に記録・保管
【今すぐ集めるべきデータ】
- 取引所の年間取引報告書(CSV ダウンロード)
- 銀行の入出金履歴
- ウォレットの送受信履歴(Etherscan、BSCScan など)
- DEX取引の履歴(MetaMask など)
👉:合わせて読みたい【仮想通貨】メタマスクの使い方完全ガイド|2025年最新機能と初心者向け設定方法
【おすすめツール】
- Gtax:国内最大手の仮想通貨税金計算ツール
- Cryptact:自動損益計算が可能
- Koinly:海外取引所にも対応
cryptact
仮想通貨(暗号資産)の自動損益計算ができるPCオンラインアプリ
-
-
【仮想通貨】100万円の利益でも○○万円消える!?税金の落とし穴とは?
「仮想通貨で利益が出たけど、税金ってどうなるの?」「確定申告しないとダメ?バレるの?」こんな疑問を持つ人は多いですよね。仮想通貨は便利で夢のある投資ですが、利益を出したら当然、税金が発生します。知らず ...
続きを見る
③仮想通貨税務に詳しい専門家への相談
【特にこんな方は早めの相談を】
- 年間利益が100万円を超える
- 複数の取引所(CEX・DEX・Perp DEX)を使っている
- 過去数年間申告していない
- NFTやDeFi(流動性マイニングなど)も利用している
- 損益計算が複雑で自分では整理が難しい
仮想通貨の税務は非常に複雑です。通常の税理士では対応が難しい場合もあるため、仮想通貨税務に詳しい専門家を選ぶことが重要です。
👉:合わせて読みたい【仮想通貨】edgeX完全ガイド|安全性とリスク徹底比較!パーペチュアルDEX選び方決定版
まとめ:透明性の時代に適応することが真の自己防衛
財務省が公式に「現行制度では自己管理ウォレットへの差押えが困難」と指摘したことは、確かに重要な事実です。
しかし、これは「将来的に法整備する」という課題提起でもあると理解すべきでしょう。
仮想通貨市場は成熟期を迎えつつあります。透明性が高まることは、長期的には市場の健全な発展につながります。適切に対応すれば何も恐れることはありません。わからないことがあれば、専門家に相談しながら、しっかり準備していきましょう。
重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。また、税務に関する個別具体的なアドバイスを提供するものでもありません。税務申告については必ず税理士等の専門家にご相談ください。仮想通貨は価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。投資判断は自己責任で行ってください
海外取引所・DEX利用時の重要な注意事項
法的リスクについて
・日本居住者の利用は、完全に自己責任での利用となります
・資金保護や紛争解決において、日本の法的保護を受けられません
・エアドロップや取引利益は課税対象です。必ず税務申告を行ってください
🔐 招待コード:kimchan
📢 最新情報は各SNSでも発信中!
フォローしてお得なチャンスを逃さないでね✨

