
2025年12月19日、米連邦準備制度理事会(FRB)は、暗号資産企業が中央銀行の決済システムに直接アクセスできる「ペイメントアカウント」(簡易版マスター口座)の提案を公表し、パブリックコメントの受付を開始しました。同時に、日本では三菱UFJ・三井住友・みずほ銀行の3メガバンクが、円建てステーブルコインの共同発行に向けた実証実験を開始(2025年11月)。金融庁も支援を表明しています。
この2つの動きは、米国と日本の金融当局が「ステーブルコインの決済インフラ整備」を同時に推進している証であり、日本の投資家にとって、ドル建てと円建てステーブルコインの両方が日常の決済・資産運用で利用できる環境への大きな転換点です。
本記事で分かること
- FRBのペイメントアカウント提案の内容と現状
- 3メガバンクの円建てコイン計画との関係
- 日本の投資家への具体的な影響

FRBが「ペイメントアカウント」提案──暗号資産企業が中央銀行に直接接続へ

提案の概要
🇺🇸米連邦準備制度理事会(FRB)は2025年12月19日、暗号資産企業やフィンテック企業を対象に、中央銀行の決済システムへの限定的なアクセスを認める「ペイメントアカウント」の提案を公表しました。
| 項目 | 従来のマスター口座 | 提案中のペイメントアカウント |
|---|---|---|
| 対象機関 | 全連邦公認銀行 | 適格なステーブルコイン発行者・フィンテック企業 |
| 利息付与 | あり | なし |
| 信用供与 | あり | なし |
| 決済サービス | 全サービス | 基本的な決済機能のみ |
現在のステータス:検討段階、審査は未開始
重要な点として、この提案は現在パブリックコメント期間(45日間)であり、正式に承認・施行されたわけではありません。
リップル社(Ripple)、サークル社(Circle)、アンカレッジ・デジタル社(Anchorage Digital)など複数の暗号資産企業が、従来のマスター口座やナショナルトラストバンクの免許取得を目指して申請を行っていますが、今回の「ペイメントアカウント」提案による審査プロセスが開始されるのは、パブリックコメント期間終了後となります。
<暗号資産企業がFRB決済に直接接続>という状態は、まだこれからです。
マスター口座とは?
マスター口座は、連邦準備制度が提供する金融機関向けの口座で、中央銀行決済システムへの直接アクセスを可能にします。従来は連邦公認銀行のみが保有できましたが、今回の「ペイメントアカウント」提案は、銀行免許を持たない暗号資産企業にも限定的なアクセスを認める内容です。
なぜ今「ペイメントアカウント」なのか──背景にある規制の転換
FRBがこのタイミングで「ペイメントアカウント」提案を打ち出した背景には、米国の暗号資産規制をめぐる大きな転換があります。
トランプ政権2.0と「親暗号資産」政策
2025年1月に発足したトランプ第2期政権は、前バイデン政権とは対照的に暗号資産に友好的な姿勢を鮮明にしています。主要な規制当局のトップが相次いで交代し、「規制による締め付け」から「イノベーション促進」へと方針が大きく転換しました。
| 規制機関 | 以前の姿勢 | 現在の方向性 |
|---|---|---|
| SEC(証券取引委員会) | 暗号資産企業への厳しい執行措置 | 明確なルール整備と対話重視 |
| FRB | マスター口座申請の長期化・却下 | 簡易版アクセス(ペイメントアカウント)検討 |
| 議会 | 規制法案の停滞 | ステーブルコイン法案の審議加速 |
GENIUS法とステーブルコイン規制法案の動き
2025年12月、連邦預金保険公社(FDIC)もGENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins Act)に基づく申請手続きを提案しました。この法律は、銀行子会社によるステーブルコイン発行を可能にするもので、FRBの「ペイメントアカウント」提案と連動する形で、ステーブルコイン企業に中央銀行決済へのアクセスを認める環境整備が進んでいます。
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Circle、Rippleなどの動きと今後の展開
すでに複数の暗号資産企業が、FRB決済システムへのアクセスを目指して動いています:
- Circle(USDCの発行元): 銀行免許取得を目指し、2025年12月にOCC(通貨監督庁)から条件付き承認を取得
- Ripple: ナショナルトラストバンク設立を申請中
- Anchorage Digital: すでに連邦銀行免許を保有し、暗号資産カストディ業務を展開
今回の「ペイメントアカウント」提案が最終承認されれば、これらの企業は銀行免許の完全取得を待たずに、FRB決済システムへの限定的なアクセスが可能になります。
日本への影響①:USDCの信頼性向上──日本人投資家にも恩恵
SBI VCトレードがUSDCを取り扱い(2025年3月26日開始)
日本では、SBI VCトレードが2025年3月26日から、ドル建てステーブルコイン「USDC」の一般向け取扱いを国内で初めて開始しました。改正資金決済法(2023年6月施行)により、日本でもステーブルコインが「電子決済手段」として法的に位置づけられたためです。
FRBの「ペイメントアカウント」提案が実現すれば、USDC発行元のサークル社が中央銀行決済システムに直接接続できるようになり、日本人投資家が利用するUSDCの信頼性・流動性がさらに向上する可能性があります。
ただし、現時点でSBI VCトレードやサークル社がFRBの決済システムに直接接続しているわけではありません。あくまで提案段階であり、実現すればメリットが生じるという見通しです。
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日本への影響②:3メガバンクの「円建てステーブルコイン」共同発行計画──米国提案との連動
3メガバンクが規格を統一した円建てコイン発行へ
日本では、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行が、円建てステーブルコインを共同発行する計画を進めています(日本経済新聞、2025年10月17日報道)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 法人向け(企業間決済) |
| 通貨 | 円建て(将来的にドル建ても検討) |
| 規格 | 3メガで統一、相互乗り換え可能 |
| 実証実験開始 | 2025年11月(金融庁支援対象に採択) |
| 目標時期 | 2025年度内の実用化を目指す |
この計画は、日本国内の企業間決済を効率化し、海外企業との決済コストを削減することを主な目的としています。
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米国と日本の決済インフラ競争──「覇権争い」ではなく相互補完
FRBの「ペイメントアカウント」提案と、日本の3メガバンクによる円建てステーブルコイン計画を比較すると、以下のような構図が見えてきます。
| 項目 | 米国陣営(ドル建て) | 日本陣営(円建て) |
|---|---|---|
| 主要プレイヤー | サークル(USDC)、テザー(USDT)、リップル | 三菱UFJ・三井住友・みずほ銀行 |
| 規制環境 | FRBがペイメントアカウント提案(検討段階) | 金融庁が実証実験を支援(2025年11月~) |
| 強み | 世界中で利用される基軸通貨(ドル) | 日本企業間決済の効率化、円による決済リスク回避 |
| ターゲット | 国際送金・国際決済・個人投資家 | 国内法人決済・海外企業との円建て取引 |
| 実用化時期 | パブリックコメント期間終了後(時期未定) | 2025年度内実用化を目標 |
<誤解されやすいポイント> この2つの動きを「米国vs日本のステーブルコイン覇権争い」と表現するのは、やや誇張で実際には:
- 米ドル建てステーブルコイン(USDC/USDT) は、既に世界中で圧倒的なシェアを持ち、国際送金・国際決済で広く利用されています。
- 日本の円建てステーブルコイン計画は、主に日本国内の企業間決済を効率化し、為替リスクを回避することを目的としています。「円の国際的プレゼンス向上」という側面もありますが、ドル建てコインの優位性に対抗して「覇権を争う」という構図ではありません。
むしろ、ドル建てと円建てのステーブルコインが相互補完的に機能し、国際決済と国内決済の両面でブロックチェーン技術を活用した効率的な金融インフラが整備される、と理解するのが適切です。
日本への影響③:国際送金コストの劇的低下──日米間の決済が変わる
従来の国際送金との違い
現在、日本から米国への国際送金を銀行経由で行う場合、以下のようなコストが発生します:
- 送金手数料:2,000~5,000円
- 中継銀行手数料:2,000~4,000円
- 為替手数料:1ドルあたり1円程度
ステーブルコイン(USDCや円建てコイン)を利用すると:
- 送金手数料:数百円~1,000円程度(ブロックチェーンのガス代)
- 中継銀行手数料:不要
- 為替手数料:ほぼゼロ(直接ドル建てor円建てで保有)
規制動向:日本の仮想通貨税制も大きく変化

2026年度税制改正大綱で申告分離課税20%へ
🇯🇵日本では、2025年12月19日に政府・与党が発表した2026年度税制改正大綱において、仮想通貨(暗号資産)の税制が劇的に変化することが正式決定されました。
主な内容:
- 税率: 現行の最大55%(累進課税)から、一律20%(申告分離課税)へ
- 損失繰越: 3年間の繰越控除制度を創設
- 損益通算: 仮想通貨取引間での損益通算が可能に
- 適用開始時期: 2028年1月1日(見込み)
- 対象: 「特定暗号資産」のみ(国内取引所の登録銘柄が中心)
ステーブルコインの決済インフラ整備と並行して、日本の投資環境も大きく改善される見込みです。
👉:合わせて読みたい【ニュース深掘り】仮想通貨税制が歴史的転換!申告分離20%で日本市場に何が起きる?
CARF制度で海外取引所の情報も捕捉へ
2026年1月からは、OECD主導のCARF制度(暗号資産等報告枠組み)により、 海外取引所での取引情報が各国税務当局に自動報告されるようになります。
投資家への影響:
| 時期 | 影響 |
|---|---|
| 2026年1月〜 | 海外取引所の情報が捕捉開始 |
| 2027年 | 各国間で情報交換開始 |
| 2028年1月〜 | 申告分離課税20%適用開始(特定暗号資産限定) |
海外取引所を利用している場合、国内取引所への資産移管や取引履歴の整理を検討する時期です。
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投資家が知っておくべきリスクと注意点
規制の不確実性
- FRBの提案は検討段階: パブリックコメント期間中であり、最終的な承認・施行時期は未定です。提案内容が変更される可能性もあります。
- 3メガバンクの計画は報道ベース: 実証実験は開始されましたが、正式な商用サービス開始時期や詳細な仕様は未定です。
- 日本の規制も変化中: 金融庁の検討事項は、正式決定まで変更される可能性があります。
銀行預金への影響
FRBの分析(2025年12月17日公表)によれば、ステーブルコインの普及により銀行預金が最大で600億ドル~1.26兆ドル減少する可能性があるとされています。これにより、銀行の融資能力が低下し、金利環境に影響を与える可能性があります。
サイバーセキュリティリスク
ステーブルコインは中央集権的な発行体が管理しているため、ハッキングやシステム障害のリスクが存在します。利用する際は、信頼できるプラットフォームを選ぶことが重要です
まとめ:米国と日本、同時に進む決済インフラの転換
2025年12月、米連邦準備制度理事会(FRB)が暗号資産企業向けに「ペイメントアカウント」の提案を公表し、日本では3メガバンクが円建てステーブルコインの実証実験を開始しました。
この2つの動きは、ドル建てと円建てのステーブルコインが、国際決済と国内決済の両面でブロックチェーン技術を活用した新しい金融インフラを形成しつつあることを示しています。
📊 日本の投資家にとってのポイント
- USDC(ドル建て): SBI VCトレードで既に取扱い開始。国際送金や海外決済で活用可能。FRB提案が実現すれば、さらに信頼性・流動性が向上。
- 円建てステーブルコイン: 3メガバンクが実証実験中。国内企業間決済での利用が期待される。
- 規制環境: FRBの提案は検討段階、3メガの計画も実証実験段階。正式決定まで注視が必要。
重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。仮想通貨は価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。レバレッジ取引は特にリスクが高く、資金を全て失う可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。必ず信頼できる情報源を元にし、自分自身で十分なリサーチを行いましょう
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