
2025年12月26日、政府は2026年度予算案を閣議決定しました。一般会計の歳出総額は122兆3092億円と、2年連続で過去最大を更新。高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」路線のもと、予算規模は膨張を続けています。しかしその裏で、長期金利は12月22日に一時2.10%へ上昇し、これは1999年2月以来、約27年ぶりの高水準です。金融市場は日本国債を売り、円を売り続けています。なぜ日銀が利上げしても円安が進むのか?なぜ財政拡大が金利上昇を招くのか──2026年の投資戦略を左右する「高市財政」の本質を、最新データで徹底解説します。
本記事で分かること
- 高市政権の122兆円予算の中身と財政悪化の実態
- 長期金利2.1%上昇と円安が同時進行する理由
- 2026年の投資戦略:日本株・円・国債への影響

12月26日に閣議決定:過去最大122兆円予算の衝撃

予算規模が示す「積極」の実態
2025年12月26日、政府が閣議決定した2026年度予算案の詳細が明らかになりました。
| 項目 | 2026年度予算案 | 2025年度当初 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 一般会計総額 | 122兆3092億円 | 115兆1978億円 | +7兆1114億円(+6.2%) |
| 新規国債発行額 | 29兆5840億円 | 28兆6471億円 | +9369億円 |
| 国債費 | 31兆2758億円 | 28兆2179億円 | +3兆579億円(+10.8%) |
| 国債依存度 | 24.2% | 24.9% | -0.7ポイント |
出典:財務省、日本経済新聞、時事通信、読売新聞
注目すべきは、歳出の伸び7兆円のうち、国債費(借金の返済と利払い)だけで3兆円を占めている点です。つまり、新しい政策のために使える予算の増加は実質4兆円程度にとどまります。
補正予算18兆円との「ダブルパンチ」
さらに見逃せないのは、高市政権が2025年12月16日に成立させた補正予算です。
- 2025年度補正予算:18兆3034億円(コロナ禍後で過去最大)
- このうち約11兆円を新規国債発行で賄う
高市首相は補正予算編成にあたり、財務省が当初提示した14兆円程度の原案を「不十分」として18.3兆円まで押し上げたことが報じられています(毎日新聞)。
当初予算122兆円と補正予算18兆円を合わせると、実質的な2026年度の財政規模は140兆円超えという見方もできます。
出典:毎日新聞2025/12/25|高市首相の「責任ある積極財政」 金融市場が探す「責任」
長期金利2.1%ショック:市場が示す「NO」のサイン
27年ぶりの高水準を記録した理由
2025年12月22日、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時2.10%に上昇しました。これは1999年2月以来、約26年10ヶ月ぶりの高水準です(野村総合研究所、日本経済新聞、朝日新聞)。
長期金利上昇の3つの要因
- 日銀の利上げ継続観測:12月19日に日銀が政策金利を0.5%から0.75%へ引き上げ。植田総裁は「今後も段階的な利上げを進める」と明言
- 財政悪化への懸念:高市政権の積極財政路線に対し、市場が「財政規律が緩んでいる」と判断
- 円安圧力:財政悪化懸念と日米金利差から円が売られ、輸入インフレ圧力が強まる
特に重要なのは、日銀が利上げしたにもかかわらず、長期金利はさらに上昇した点です。通常、利上げは景気抑制と金利安定をもたらすはずですが、今回は逆の反応が起きました。
国債費31兆円の衝撃──雪だるま式に膨らむ利払い
長期金利上昇の影響は、すでに2026年度予算案に表れています。
| 想定金利 | 2025年度 | 2026年度 |
|---|---|---|
| 新規国債 | 2.0% | 3.0% |
| 利払い費増加分 | - | +2.5兆円 |
出典:読売新聞、財務省
財務省は2028年度にかけて金利が2.5%まで上昇すると想定しており、低金利時代に発行した国債が借り換えに伴って順次、高金利の国債に置き換わるため、利払い費は加速度的に増す見込みです(時事通信)。
つまり、今後は「借金の返済と利払いのために、新たな借金を重ねる」という悪循環に陥るリスクが高まっています。
「責任ある積極財政」の実態:財政健全化目標はどうなった?

「単年度PB黒字化」目標の見直しが意味するもの
高市首相は2025年11月7日の衆院予算委員会で、歴代政権が掲げてきた「単年度のプライマリーバランス(PB)黒字化目標を取り下げる」と明言しました(Reuters、Bloomberg、日本経済新聞、朝日新聞)。
プライマリーバランスとは?
- 国債の利払いを除いた歳入と歳出のバランス
- PBが黒字=新たな借金をせずに政策経費を賄えている状態
- 歴代政権は「2026年度までのPB黒字化」を財政健全化の目標としてきた
高市首相は「単年度のPBという考え方は取り下げる。数年単位でバランスを確認する方向に見直す」と述べていますが、具体的な目標時期は示していません(衆議院会議録)。
市場の反応──「トラスショック」再来への警戒
金融市場では、高市政権の財政運営に対する懸念が顕在化しています。
- 円相場:日銀利上げ後も156円台で推移。利上げしても円安が止まらない異常事態
- 普通国債残高:2026年度末に1145兆円に達する見込み(時事通信)
- エコノミストの警告:野村総合研究所の木内登英氏は「市場が燻る財政悪化への懸念は大きな危機感へと発展し、大幅な株安、円安、金利上昇の『日本売り』が起きる可能性がある」と指摘
2022年に英国で起きた「トラスショック」(無謀な減税策による財政信認低下で、ポンド急落・国債暴落が発生)の日本版を懸念する声も出始めています。
2026年の投資戦略:「高市財政」にどう備えるか
円安はさらに進むのか?
三井住友DSアセットマネジメントは、ドル円の2026年末予想を150円に設定しています。しかし、財政悪化懸念が強まれば、さらなる円安リスクがあります。
円安が進む3つのシナリオ
- FRBの利下げペース鈍化:米国のインフレが再燃し、日米金利差が維持される
- 日銀の利上げペース鈍化:円安によるインフレ圧力はあるが、財政悪化で日銀が積極利上げできない
- 財政信認の低下:国際的な投資家が日本国債と円を売却し、「日本売り」が加速
投資家の対策
- ✅ 外貨建て資産(米ドル、ユーロ)の保有比率を引き上げ
- ✅ 輸出関連株(自動車、機械)への投資で円安メリットを享受
- ❌ 円預金のみでの資産保有はインフレで実質価値が目減り
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日本株への影響──セクター別戦略
| セクター | 影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 輸出関連(自動車・機械) | プラス | 円安で海外売上の円換算額が増加 |
| 金融(銀行・保険) | プラス | 金利上昇で利ざやが拡大 |
| 内需(小売・外食) | マイナス | 輸入コスト上昇で収益圧迫 |
| 不動産 | マイナス | 住宅ローン金利上昇で需要減少 |
日経平均は2025年末時点で5万円台を回復していますが、財政懸念が強まれば海外投資家の「日本売り」が加速するリスクがあります。
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国債投資はリスクか?チャンスか?
短期的リスク
・長期金利がさらに上昇すれば、既存の国債価格は下落
・財政信認が低下すれば、国債が「安全資産」ではなくなる可能性
長期的な視点
・金利3%台の国債は、低金利時代から見れば魅力的な利回り
・ただし、インフレ率が3%を超えれば実質リターンはマイナス
国債の価格と金利の関係とは?
国債は「固定金利」なので、市場金利が上昇すると既存の国債の魅力が低下し、価格が下落します。例えば、利回り2%の国債を持っているときに市場金利が3%になると、新発国債の方が有利なので、既存国債は売られます。
まとめ:「積極」と「責任」のバランスを見極めよ
高市政権が推進する積極財政は、確かに短期的には経済を下支えする可能性があります。2026年度税制改正では「年収の壁」を178万円に引き上げ、家計の手取り増加を狙っています。しかし、金融市場が示している長期金利2.1%と円安156円という現実は、「財政規律への懸念」という市場の本音を物語っています。
投資家が2026年に注目すべき3つのポイント
- 日銀の次の利上げタイミング:2026年春頃が有力。利上げ幅と円相場への影響を注視
- 補正予算の規模:2026年度も大型補正が組まれるか。財政拡大が続けば市場の警戒は強まる
- 海外投資家の動向:日本国債と円の保有比率が下がれば、「日本売り」のシグナル
高市首相は「市場の信認を確保する」と繰り返し述べていますが、その「責任」の実態が問われるのは、まさに2026年です。私たち投資家は、政府の言葉ではなく、金利と為替という「市場の声」を冷静に読み解く必要があります。
重要な投資リスク警告
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