
2025年12月19日、日本銀行は政策金利を0.5%から0.75%へ引き上げを決定しました。これは1995年9月以来、実に30年ぶりの高水準です。金融の教科書では「利上げすれば通貨高になる」と教わりますが、発表直後から円安が加速し、ドル円は157円台へ突入。市場では「なぜ利上げしたのに円安なのか?」という困惑の声が広がっています。利上げ前の12/13に記事にしましたが、今回の記事では、利上げ「決定後」の市場反応を中心に、植田総裁の12月19日記者会見の詳細、円安が進んだ理由、そして2026年の為替見通しと投資戦略を徹底解説します。
本記事で分かること
- 日銀0.75%利上げ後に円安が進んだ本当の理由
- 2026年の日米金利差シナリオと為替見通し
- 投資家が今考えるべき資産配分戦略

12月19日、日銀が30年ぶり0.75%利上げを決定

全員一致で利上げ決定──しかし直後に円安が加速
12月19日の金融政策決定会合で、日銀は全員一致で0.25%の追加利上げを決定しました。これは2025年1月以来、実に7会合ぶりの利上げです。
利上げの背景(詳細は12月13日の記事参照):
- 2025年春闘で賃上げ率5.25%達成(34年ぶり高水準)
- 物価上昇率が2%近辺で推移
- 2026年春闘に向けた賃上げ継続の基本方針
ロイター、ブルームバーグ、CNBCなど主要メディアが一斉に報じたこの決定。市場関係者の大半は利上げ自体を予想していました。しかし、予想外だったのは「その後の市場反応」でした。
政策金利とは?
中央銀行が民間銀行にお金を貸し出す際の基準となる金利です。この金利が上がると、銀行間の金利→企業への貸出金利→住宅ローン金利などが連動して上昇します。つまり政策金利の変更は、私たちの生活にも直接影響する重要な決定なのです。
発表直後、円は157円台へ──理論と現実の乖離
金融理論では「利上げ→通貨高」が基本です。なぜなら金利が高い国の通貨で運用すれば、より多くの利息収入を得られるからです。しかし今回の市場反応は違いました。
| 時刻 | ドル円レート | 市場の動き |
|---|---|---|
| 12月19日 午後12時 | 155.80円 | 利上げ発表前 |
| 午後3時半(植田総裁会見開始) | 155円後半 | 一時的な円高 |
| 会見中 | 156.50円 | 40銭の急落(円安) |
| 12月20日 | 157.10円 | 円安が加速 |
| 12月22日現在 | 157円台前半 | 円安継続中 |
ロイターは「円は利上げ後に主要通貨に対して下落した」と報道。CNBCも「日銀が金利を30年ぶりの高さに引き上げたにもかかわらず、円は弱含んだ」と伝えています。
なぜこのような「理論と現実の乖離」が起きたのでしょうか?その答えは、為替レートが単純な金利の高低だけでなく、複数の要因で決まるからです。
為替レートが動く仕組み【初心者用解説】
為替レートは「需要と供給」で決まります。ドルが欲しい人が多ければドル高・円安に、円が欲しい人が多ければ円高・ドル安になります。
この需要と供給に影響を与える要因は:
- 金利差:高金利の通貨は買われやすい
- 経済成長の見通し:成長期待が高い国の通貨は強くなりやすい
- 市場心理:「今後どうなるか」という投資家の期待
- 地政学リスク:戦争や政治不安がある地域の通貨は売られやすい
今回は「金利は上がったけど、まだ不十分」という市場心理が円安を招いたのです。
植田総裁会見が示した「まだ道半ば」のシグナル
「実質金利は極めて低い」発言の意味
🇯🇵 植田総裁は会見で繰り返し次のポイントを強調しました:
- ✅ 実質金利は「まだ極めて低いところにある」(時事通信報道)
- ✅ 緩和的な金融環境は「維持されている」
- ✅ 2026年以降も経済・物価動向を見ながら利上げを検討
- ✅ 今後の利上げペースは「実質金利や貸出動向などを総合的に判断」
時事通信は「日銀、0.75%に利上げ 植田総裁『実質金利極めて低い』」と報道。日経新聞も「金利から物価上昇率を差し引いた実質金利がまだ極めて低いところにある」と伝えています。
つまり日銀自身が「0.75%に上げたけど、経済を刺激する緩和的な状態はまだ続いている」と認めたのです。市場はこのメッセージを「追加利上げは必要だけど、急がない」と解釈しました。
実質金利とは【初心者用解説】
名目金利(表面上の金利)から物価上昇率(インフレ率)を差し引いたものです。
計算例:
- 政策金利(名目金利):0.75%
- インフレ率:2.5%
- 実質金利 = 0.75% - 2.5% = -1.75%
実質金利がマイナスということは、「金利をもらっても、物価上昇で実質的には損をしている状態」を意味します。つまり「まだまだお金を借りやすい環境」なのです。
中立金利の謎──植田総裁が明言を避けた理由
記者会見でもう一つ注目されたのが「中立金利」に関する質疑です。
中立金利とは:経済を刺激することも抑制することもない、ちょうど良い金利水準のこと。利上げの「ゴール地点」の目安とされます。
市場では、2024年8月に日銀が発表したワーキングペーパー(研究論文)に基づき、「日本の中立金利は1.0%〜2.5%程度」という認識が共有されています。
しかし植田総裁は会見で具体的な水準について「特定が難しい」「不確実性が高い」と明言を避けました。
現在の0.75%は、この推計範囲の下限である1.0%にも届いていません。市場は「まだ道半ば」と受け止め、追加利上げの期待は高まったものの、「急ピッチでは上がらない」という認識も同時に広がったのです。
FRBは利下げペース減速

2026年のFRB見通し:利下げは年2回程度との予測
👉FRB(連邦準備制度理事会を指し 米国の中央銀行にあたる組織)の12月決定と2026年見通しの詳細は、12月13日の記事をご参照ください。
※注意:以下は市場予測であり、確定した情報ではありません。FRBの政策は経済指標次第で変わる可能性があります。
12月のFOMCで0.25%の利下げが決定され、政策金利は3.75%〜4.00%となりました。しかし市場では、2026年の追加利下げは年2回程度との見方が有力です。
日米金利差は依然として巨大
ここで重要なのが「日米金利差」です。簡単な計算をしてみましょう:
現在(2025年12月):
- 🇯🇵 日本の政策金利:0.75%
- 🇺🇸 米国の政策金利:3.75%〜4.00%(中間値3.875%)
- 現在の日米金利差:約3.1%
2026年末の予測(あくまで市場見通し):
- 🇯🇵 日本が0.25%ずつ2回利上げと仮定 → 1.25%
- 🇺🇸 米国がゴールドマン予測通りと仮定 → 3.00%〜3.25%(中間値3.125%)
- 2026年末の日米金利差(予測):約1.9%
1.9%の金利差は依然として大きく、「ドルで運用した方が有利」という状況が続きます。
日米金利差と為替の関係【初心者用解説】
投資家は「より高い利息がもらえる通貨」で資産を保有したいと考えます。そのため:
- 米国の金利が日本より高い → ドルを買って運用した方が得 → ドル高・円安
- 金利差が縮まる → 円の魅力が相対的に上昇 → 円高方向へ
ただし、為替は金利差だけでなく、経済成長見通しや市場心理など複数の要因で決まります。今回は「金利差縮小のペースが遅い」と市場が判断したため、円安が続いているのです。
長期金利も上昇──2.1%は27年ぶり
さらに重要な動きがあります。12月22日、日本の長期金利(10年国債利回り)が一時2.1%に上昇しました。これは1998年以来、約26年ぶりの高水準です。
👉長期金利1.9%台上昇の詳細については、12月13日の記事で詳しく解説しています。
2026年為替見通し──159円も視野に?投資家の戦略
市場予測:ドル円は158〜160円レンジへ(あくまで予測)
※重要:以下は市場予測・アナリスト見通しであり、確定した情報ではありません。為替相場は様々な要因で変動します。
では2026年、ドル円相場はどこへ向かうのでしょうか?主要機関の予測を整理しました:
| 予測機関 | 2026年Q1(予測) | 2026年Q2(予測) | 2026年Q4(予測) |
|---|---|---|---|
| BNPパリバ | 155円 | 157円 | 160円 |
| ING | 155円 | 157円 | 159円 |
| IG証券 | 158円突破なら159円へ | − | − |
為替介入のリスク──市場が警戒する水準
※重要:以下は市場観測であり、政府の公式見解ではありません。
日本政府による為替介入の可能性も市場の関心事です。過去の実績を見ると、2024年4月に161.96円、5月に160.17円で介入が実施されています。市場では157〜160円が「介入警戒水準」として意識されています。
12月22日には財務省の三村財務官が「為替市場の動向を高い緊張感を持って注視している」と発言。これは「口先介入」と呼ばれ、円安を牽制する意図があります。
為替介入とは【初心者用解説】
政府や中央銀行が、為替レートを誘導するために外国為替市場で通貨を売買することです。
- 円買い介入:円安を食い止めるため、ドルを売って円を買う
- 円売り介入:円高を食い止めるため、円を売ってドルを買う
ただし介入には巨額の資金が必要で、効果も一時的なことが多いため、「最後の手段」として慎重に使われます。
2026年に向けた投資戦略──3つのシナリオ
※以下は一般的な考え方であり、投資判断は自己責任で行ってください。
シナリオ1:円安継続(ドル円158〜160円)
- ✅ 相対的に有利な資産:外国株式、ドル建て資産、輸出関連株
- ⚠️ 注意点:輸入物価上昇で生活コストが増加、160円超えたら介入リスク
シナリオ2:緩やかな円高(ドル円150〜155円)
- ✅ 相対的に有利な資産:日本株(内需関連)、円建て債券
- ⚠️ 注意点:外貨建て資産の評価損リスク
シナリオ3:ボラティリティ拡大(急変動)
- ✅ 相対的に有利な資産:金(ゴールド)、分散ポートフォリオ
- ⚠️ 注意点:レバレッジ取引は危険
ゴールドマン・サックスは金価格について「2026年12月までに4,900ドル(14%上昇)」と予測しています(12月18日発表)。
ポートフォリオとは?
「資産の組み合わせ」のことです。例えば、日本株30%、米国株30%、債券20%、現金20%、というように、複数の資産に分散投資することで、一つの資産が下落しても全体の損失を抑えられます。
まとめ:2025年を振り返り、2026年を見据える
2025年12月19日の日銀利上げは、30年ぶりの高水準という歴史的なマイルストーンでした。しかし市場の反応は「まだ不十分」であり、円安が加速する皮肉な結果となりました。
植田総裁自身が「実質金利はまだ極めて低い」との認識を示し、緩和的な金融環境は継続していると説明。2026年以降も段階的な利上げを続ける方針ですが、そのペースは「経済・物価動向を見ながら慎重に」というものです。
一方のFRBは、市場予測によれば2026年の利下げを年2回程度に限定する見通し。日米金利差が急速に縮小するシナリオには懐疑的な見方が多数派です。ドル円相場は、市場予測では158〜160円レンジが視野に入り、政府による為替介入の可能性も市場で意識されています。
2025年を振り返ると、日銀の金融正常化は「一歩前進、二歩後退」のような歩みでした。しかし長期的には、日本経済が健全な金利環境に戻ることは必要不可欠です。
重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。仮想通貨は価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。レバレッジ取引は特にリスクが高く、資金を全て失う可能性があります。投資判断は自己責任で行ってください。必ず信頼できる情報源を元にし、自分自身で十分なリサーチを行いましょう
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