仮想通貨(暗号資産)業界を震撼させる史上最大級の「ミント事故」が発生しました。PayPalのステーブルコインPYUSDを発行するパクソス社(Paxos)が、なんと300兆ドル分ものPYUSDを誤って発行し、わずか22分後にすべてを焼却するという前代未聞の事態が起きています。この数字がどれほど桁外れかというと、全世界のGDPの約2.5倍に相当する規模です。

本記事で分かること
- 300兆PYUSD誤発行の詳細と深刻な影響
- 業界の信頼性に与えた重大な打撃
- PayPal・パクソスが直面する今後のリスク
史上最大級の「ファット・フィンガー」事故の全貌
事件の経緯と規模の驚異
2025年10月15日午後3時12分(EST)、ステーブルコイン発行会社パクソス(Paxos)が内部転送の過程で技術的エラーを起こし、PayPal USD(PYUSD)を300兆枚も誤発行する「ミント事故」が発生しました。この「ファット・フィンガー・エラー」(入力ミス)の規模は、仮想通貨史上最大級です。
パクソス(Paxos)とは?
パクソスは2012年に設立されたアメリカのフィンテック企業で、ステーブルコイン発行業界の大手です。PayPalのPYUSD以外にも、バイナンス取引所のBUSD(現在は新規発行停止)なども手がけていました。ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)からの信託免許を取得しており、規制に準拠したステーブルコイン発行を行っています。現在は米国通貨監督庁(OCC)への国家信託免許申請中で、承認されれば全米での業務拡大が可能になります。
PYUSD(PayPal USD)とは?
PYUSDは、決済大手PayPalが2023年8月に発行を開始したステーブルコインです。1PYUSD=1米ドルの価値を保つよう設計されており、米ドル預金、米国債、現金同等物によって100%担保されています。発行・管理はパクソス社が行い、PayPalのプラットフォーム内での送金や決済、仮想通貨の売買などに利用できます。現在の時価総額は約23億ドルで、ステーブルコイン市場では第6位の規模を誇ります。
項目 | 数値 | 比較対象 |
---|---|---|
誤発行額 | 300兆ドル | 全世界GDP(約117兆ドル)の約2.5倍 |
現金通貨との比較 | 125倍 | 流通する実際の米ドル紙幣の125倍 |
発行から焼却まで | 22分 | 史上最短の大規模バーン |
取引手数料 | 2.66ドル | 300兆ドル分を作るのにかかった実際のコスト |
Bloombergの報道によると、パクソス社は即座にエラーを認識し、発行されたPYUSDをすべて焼却しました。「これは内部的な技術的エラーであり、セキュリティ侵害ではありません。顧客資金は安全です」と同社は声明を出しています。
ミントとは?
ミント(Mint)は、仮想通貨において新しいトークンを作成・発行することです。従来の造幣局が硬貨を鋳造(mint)することから名付けられました。ステーブルコインの場合、通常は担保となる米ドルを預かった分だけトークンを「ミント」します。
ブロックチェーン上の証拠が示す深刻な問題
Etherscan上で確認できるトランザクション記録を詳しく見ると、事件の直前に行われた取引はいずれも3億PYUSDでした。この状況から、業界関係者の間では6つのゼロを余分に入力したミスの可能性が指摘されていますが、パクソス社は公式には「内部的な技術エラー」としか説明していません。
- 事件直前の取引:300,000,000 PYUSD(3億枚)
- 今回の誤発行:300,000,000,000,000 PYUSD(300兆枚)
- 推測される原因:6つのゼロの入力ミス(※業界関係者の分析)
- 公式発表:「内部的な技術エラー」(具体的な原因は非公開)
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トランザクションとは?
トランザクションは、ブロックチェーン上で実行される取引記録のことです。仮想通貨の送金、受取、スマートコントラクトの実行など、あらゆる操作がトランザクションとして記録されます。一度ブロックチェーンに記録されると改ざんできないため、今回のような事件でも透明性が保たれ、誰でもEtherscanなどのブロック探索サイトで内容を確認できます。
⬇️ 実際にトランザクションを追跡できます
今回の事件に関連する主要なトランザクションID
【主要なトランザクションID】
1)300兆PYUSD発行(ミント)のトランザクション
0xc45dd1a77c05d9ae5b2284eea5393ecce2ac8a7e88e973c6ba3fe7a18bf45634
- 実行時刻:2025年10月15日 UTC午後7時12分(EST午後3時12分)
- 内容:300兆PYUSDの発行
- Etherscanリンク:https://etherscan.io/tx/0xc45dd1a77c05d9ae5b2284eea5393ecce2ac8a7e88e973c6ba3fe7a18bf45634
2)300兆PYUSD焼却(バーン)のトランザクション
0xaa532ae7f06cccdbdc226f59b68733ae8594464a98e128365f8170e305c34f4b
- 実行時刻:発行から約22分後
- 内容:300兆PYUSDをアクセス不可能なアドレスに送信(焼却)
- Etherscanリンク:https://etherscan.io/tx/0xaa532ae7f06cccdbdc226f59b68733ae8594464a98e128365f8170e305c34f4b
参考)事件直前の正常なトランザクション
正常な取引の「3億PYUSD」は以下が確認されています:
- 供給量減少:https://etherscan.io/tx/0xe9faf15455483e9503df599140550f19f4fa7e9dd3fdaed6ccfd597c64e80db2
- トークン転送:https://etherscan.io/tx/0xd6343c3d44f53edc524a72d64c819854929703d35c72afb071afe4fae0b84db2
これらのトランザクションIDをEtherscan上で確認することで、事件の詳細な経緯を時系列で追跡することができます。
表面的には「軽微」だが実際は業界への深刻な打撃
見た目の影響と隠れた深刻なリスク
確かに、この事件の直接的な被害は限定的でした:
- 22分で全額焼却され実害なし
- PYUSDの価格下落は一時的な0.5%のみ
- 顧客資金に損失なし
しかし、これは氷山の一角に過ぎません。業界専門家や規制当局からは厳しい批判の声が上がっています。
規制当局からの厳しい視線
元SEC委員長ガリー・ゲンスラーの元首席補佐官で、現在Better Markets政策ディレクターのアマンダ・フィッシャー氏はDecryptの取材で以下のように述べています:
「ファット・フィンガー・エラーでステーブルコインの総供給量を12万倍に増やせるなら、規制当局はその企業に国家銀行免許と決済システムの鍵を与えることについて慎重に検討すべきだ」
問題点 | 具体的な影響 | 長期リスク |
---|---|---|
技術的脆弱性 | 300兆ドルの誤発行 | システム信頼性への疑問 |
内部統制不備 | 事前防止策が機能せず | 規制承認への悪影響 |
透明性の欠如 | 自己申告型の監査のみ | 機関投資家の離脱リスク |
業界関係者も困惑!DeFi市場の緊急対応
Aaveが示した「危機感」の本質
分散型金融(DeFi)プロトコル最大手のAaveが即座にPYUSDマーケットを一時停止したのは、単なる予防措置ではありません。Chaos Labs創設者のオマー・ゴールドバーグ氏が「予期せぬ大規模トランザクション」を理由に挙げたのは、このような規模のエラーが前例がないことを意味しています。
業界専門家からの厳しい批判
仮想通貨ウォレットGnosisの創設者兼CEOマーティン・ケッペルマン氏は、この事件についてX(旧Twitter)で以下のようにコメントしています:
Certainly not a good look to get the decimals wrong when minting stables and not having procedures in place to catch that early. https://t.co/DY5OBK1P8N
— koeppelmann.eth 🦉💳 (@koeppelmann) October 15, 2025
「ステーブルコイン発行で小数点を間違えて、それを早期に発見する手順がないのは確実に良くない見た目だ」
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PayPal・パクソスが直面する重大な今後のリスク
規制承認への深刻な悪影響
パクソスは現在、米国通貨監督庁(OCC)に国家信託免許を申請中です。この免許が承認されれば、全米でより自由に金融業務を展開できるようになります。しかし、今回の事件により承認が困難になる可能性が高まっています。
ステーブルコインの根本的な問題が露呈
Web3IsGoingGreatの分析では、今回の事件がステーブルコイン業界の構造的な問題を浮き彫りにしたと指摘されています:
- 準備金の透明性不足:PayPalは「100%準備金保有」を約束しているが、それを保証するセーフガードが不十分
- 監査体制の甘さ:月次の第三者証明(監査ではない)のみで、リアルタイム監視なし
- 自己申告への依存:発行体の自己申告型レポートが主な透明性確保手段
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競合他社への利益流出リスク
今回の事件により、以下のような競争上の不利益が予想されます:
影響範囲 | 短期的影響 | 中長期的リスク |
---|---|---|
機関投資家 | 信頼性への疑問 | Circle(USDC)等への移行 |
規制当局 | 監視強化 | 免許承認の困難 |
DeFiプロトコル | リスク管理強化 | 統合解除の可能性 |
一般利用者 | 不安の拡大 | 他のステーブルコインへの移行 |
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仮想通貨史上最大級の焼却事件が示す業界の未熟さ
過去の事例との比較で見える異常さ
今回の300兆ドル相当のPYUSD焼却は、その規模の異常さにおいて前例がありません:
プロジェクト | バーン量(価値) | 実施時期 | 性質 |
---|---|---|---|
PYUSD(今回) | 300兆ドル相当 | 2025年10月 | 誤発行の緊急修正 |
OKX (OKB) | 6500万枚 | 2024年8月 | 計画的な供給量制限 |
Bonk | 1.7兆枚(5000万ドル相当) | 2024年12月 | 計画的な供給量調整 |
重要なのは、過去の事例はすべて計画的な焼却だったのに対し、今回は緊急事態対応だったという点です。
バーンとは?
仮想通貨において「バーン(焼却)」は、トークンを永久に使用不可能にする処理のことです。通常はアクセス不可能なアドレスに送信することで実現されます。今回のケースでは、誤って発行された300兆PYUSDを「なかったこと」にするために実施されました。
👉:合わせて読みたい【仮想通貨】バーン(Burn)ってなに?価値を高める"焼却"の仕組み
仮想通貨コミュニティの反応:笑い事では済まない深刻さ
ソーシャルメディア上では、この事件をネタにする投稿が相次ぎましたが、専門家の間では深刻な懸念が広がっています。
- 「米国の国家債務37.8兆ドルを返済できる」という皮肉な投稿
- 他の仮想通貨プロジェクトが「これは私たちが望んでいた『兆』じゃない」とコメント
- 一方で「世界最大級のステーブルコイン発行体がこんなミスをするなんて」という厳しい批判も

今回の事件から学ぶべき重要な教訓
投資家が理解すべき新たなリスク
この事件は、ステーブルコインに対する従来の理解を根本から見直す必要があることを示しています:
- 「安全」なはずのステーブルコインにも技術リスクが存在
- 発行体の内部統制システムの重要性
- 透明性と監査体制の不十分さ
- 規制監督の必要性
内部統制とは?
内部統制は、企業が業務を適正に遂行するために社内に構築する仕組みです。特に金融業界では、不正や事故を防ぐための複数のチェック機能や承認プロセスが重要とされています。今回の事件は、この内部統制システムに重大な欠陥があったことを示しています。
業界全体が直面する信頼性の危機
今回の事件は、仮想通貨業界全体に以下のような深刻な課題を突きつけています:
- 技術的安全措置の標準化:各社がバラバラの基準で運営している現状
- リアルタイム監視体制:月次レポートでは不十分な透明性
- 多段階承認システム:巨額発行時の自動チェック機能
- 業界統一基準:ステーブルコイン発行の共通ルール制定
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まとめ:300兆ドル事件が突きつけた業界の現実
パクソスによる300兆ドル相当のPYUSD誤発行事件は、表面的には22分で解決した「ヒヤット体験」に見えるかもしれません。しかし、この事件が浮き彫りにしたのは、仮想通貨業界の技術的・制度的な未熟さという深刻な現実です。
わずか数個のゼロの入力ミス(推測)で世界経済の2.5倍にあたる金額を「作れてしまう」システム、それを事前に防げない内部統制、そして月次の自己申告レポートに頼る透明性確保─これらすべてが、業界がまだ「実験段階」にあることを示しています。
最も重要なのは、この事件を「うまく処理された軽微な問題」と捉えるのではなく、「起こってはならない重大事故」として受け止めることです。規制当局、投資家、そして業界関係者すべてが、この教訓を真摯に受け止め、より堅牢なシステム構築に向けて動き出す必要があります。
PayPal、パクソス、そしてPYUSDの今後は、この事件をきっかけにどれだけ真剣に改善に取り組むかにかかっています。仮想通貨の未来は、こうした技術的・制度的な課題を乗り越えられるかどうかに左右されるでしょう。単なる技術的なバグではなく、業界全体の信頼性に関わる重大な転換点として、この事件は長く記憶されることになりそうです。

重要な投資リスク警告
本記事は情報提供を目的としており、特定の仮想通貨の購入や投資を推奨するものではありません。
仮想通貨は価格変動が大きく、元本割れのリスクもあります。投資判断は自己責任で行ってください。
必ず信頼できる情報源を元にし、自分自身で十分なリサーチを行いましょう。
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