
本記事で分かること
- 仮想通貨詐欺はどのようにして起こるのか
- 若者を狙った闇バイトが急増する理由
- 詐欺に騙され人生を狂わされないために
仮想通貨詐欺は、価値のない仮想通貨をそれらしく見せてSNSで広げ、スマホで簡単に資金を吸い上げる――。
これはもはや、従来の「投資詐欺」ではなく「振り込め詐欺2.0」とも呼べる社会問題です。警察庁も認識するSNS型投資詐欺は、若者を加担者に、高齢者を被害者に仕立て上げ、法の目をすり抜けて繰り返されています。本記事では、仮想通貨詐欺の構造と現状、社会に及ぼす影響、そして防止に向けた道筋をわかりやすく解説します。
なぜ仮想通貨詐欺は止まらないのか?
仮想通貨詐欺は、その仕組み自体が非常に“シンプルかつ巧妙”です。
少し知識がある若者であれば、30分で仮想通貨を作成し、価値のないコインを売りつけることができます。

さらに、詐欺師は「上場前」「大口投資家が参加済み」「著名人が関わっている」といった“夢と希望”を言葉巧みに演出。人の欲を刺激し、行動を急がせる心理操作(FOMO)も巧妙です。
この流れが、現代における“振り込め詐欺2.0”と言われる所以です。
SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺の急増
警察庁の最新統計によれば、令和6年(2024年)のSNS型投資詐欺の認知件数は6,380件で、前年と比較して4,109件増加し、その増加率は180.9%に達しています。被害額も871億円と前年比213.4%増と急激に拡大しています。
高額被害が特徴で、500万円超の被害が全体の93.3%を占める
さらに、SNS型投資詐欺とSNS型ロマンス詐欺を合わせた被害額は約1,268億円にのぼり、前年比で178.6%増加しています。これは1日あたり約3億5,000万円もの被害が発生していることを意味し、過去に例のない急増ぶりといえます📈
これはもはや“犯罪”ではなく、国家から富と信頼を吸い取る経済テロ。1日3.5億円が無音で消える社会は、静かに崩壊へと向かっていると言えます。
詐欺の基本フローとは?
仮想通貨詐欺は、非常に再現性が高いビジネスモデルとして構築されています。詐欺グループは、仮想通貨の発行からSNSでの拡散、送金・持ち逃げまで、すべてをテンプレート化し、何度でも繰り返すことが可能です。
次に、自己売買を繰り返してチャートを吊り上げ、「価値が上がっているコイン」として一般投資家を引き込みます。SNSやLINEを活用して、勧誘に心理的な安心感や一体感を加えながら、着実に入金を誘導。送金された仮想通貨は即座に詐欺師のウォレットに転送され、匿名化されて海外でロンダリングされます。
この一連のフローはわずか数週間で完結し、トラブルが表面化する頃には詐欺グループは姿を消しています✍️
以下が一般的な仮想通貨詐欺の流れです:
- 自作仮想通貨(価値ゼロ)を瞬時に発行
- 複数のウォレットで自己売買、価格を吊り上げ
- SNSやインフルエンサーで一般人を勧誘
- 騙された投資家を電話やLINEで細かく指導しながら振り込め詐欺をする
- 送金された仮想通貨は自動で加害者側に転送される仕組み、ロンダリングし持ち逃げ
詐欺師は最初から返金の意図はなく、透明性の高いアプリケーションを使用し、証拠が残らない様警察の捜査対象にならないよう対策をしています。
組織的な詐欺グループの存在
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SNS時代の“犯罪工場”として進化した詐欺組織
仮想通貨詐欺は、個人の犯行ではありません。ビジネスモデルとして確立された“組織型詐欺”です。複数人が役割を分担し、詐欺を「繰り返せる仕組み」にしているのが特徴です。

以下のような役割が明確に分かれています:
役割 | 内容 |
---|---|
開発担当 | 偽のアプリケーションを作成し、仮想通貨を送金させるエンジニア。 |
勧誘役(広告塔) | インフルエンサーなどを使って「今が買い時」「億れる」などとSNSで煽る。 |
カモ収集係 | LINEグループやセミナー、SNSのDMなどでターゲットに接触。 |
資金管理担当 | 被害者から集めた仮想通貨を複数ウォレットで管理・ロンダリング。 |
制圧係 | 返金を要求したりSNSで告発をする被害者の個人情報を拡散したり、民事・刑事事件に発展しないよう被害者をSNSで攻撃。 |
- このような詐欺グループは、年に1回は新たなプロジェクトを立ち上げ、名前を変え、別の“詐欺案件”として資金を吸い上げ続けます。
- また、資金はそのまま海外(特にドバイなど)に送金され、SNSでは豪遊する姿を見せつけ、「夢を見せる」ことで次の被害者や共犯者を生み出します。
- 警察が捜査する頃には、SNSアカウントもプロジェクトサイトも削除済み。詐欺ウォレットも“入れ替え”られており、追跡は難航します。
詐欺が“仕組み化”されている現代においては、被害者だけでなく、捜査機関や法制度も進化しなければ、対抗できません。

SNS型投資詐欺の実態と拡散手法
TikTok、Instagram、YouTubeなどのSNSでは、
- 「億り人になった方法」
- 「ノーリスクで2倍」
- 「今だけ上場前価格」
といった投稿が拡散されています。
一見広告に見えない形でPRされ、LINEグループやDMでの個別勧誘に移行。被害者が自分が騙されたことに気づく頃には、資金はすでに消えているのが現状で、証拠不十分により警察すら頼ることができず、泣き寝入りするしか方法はありません。
若者と高齢者が巻き込まれる“闇バイト”構造
SNSで「高収入」「スマホ1つで月収50万♪」などの甘言で集められた若者が詐欺の“加担者”になります。
高齢者は一方で、知識が乏しいことを狙われ「今がチャンスです」とLINEや電話で迫られます。
加害者も被害者も、社会的弱者であることが多く、これが二次被害、三次被害へと連鎖する構造を作っています。
法整備の限界と現状
現在、日本では:
- 仮想通貨の法的定義が曖昧
- プロジェクト発行自体には届出義務がない
- インフルエンサーの広告責任の不在
といった“グレーゾーン”が多数存在します。
これを狙って、詐欺師たちは毎年プロジェクト名を変え、繰り返し億単位の資金を持ち逃げしています。
仮想通貨詐欺によって、真面目に働く一般市民の大切な資金が海外へと流出している現状は、日本社会に深刻な悪影響を与えています。国内で循環すべき資金が不正に国外へ流出することで、地域経済や国内消費が冷え込み、国の経済成長にもブレーキをかける要因となっています。
さらに、労働の対価として得られた資金が簡単に詐欺で奪われる環境は、勤労意欲の低下や社会への不信を生み出し、真面目に働くことが報われないという風潮が広がる危険性すら孕んでいます。
ポイント
このような事態を食い止めるためには、仮想通貨の透明性向上と国際的な資金流通監視体制の強化、そして何より迅速な国内法整備が求められています。
仮想通貨詐欺の社会コスト
仮想通貨詐欺は、単なる「お金の被害」にとどまりません。現代社会において、重大な“構造破壊”を引き起こしています。
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これは単なる投資被害ではなく、「社会の構造的破壊」でもあります。
社会の信頼構造そのものが損なわれている
被害者の尊厳と人生、未来を奪う仮想通貨詐欺は、私たちの社会そのものの“基礎”を蝕んでいます。労働、努力、信用といった健全な価値観が破壊され、無責任な金儲けや詐欺的成功が称賛される歪んだ社会へと転落するリスクを孕んでいます。
これから求められる法改正・教育・技術提言
法制度の強化
果たして、投資に騙される人に「金融の知識」をつけることだけが仮想通貨詐欺を撲滅することに繋がるのでしょうか?
詐欺師たちは巧妙な手口で法を掻い潜ることに長けています。
「詐欺を働く者」が活動できる環境を黙認している現社会こそが問題ではないでしょうか?
- 仮想通貨発行への登録制と監査制の導入
- 仮想通貨を用いた詐欺に特化した刑法整備:従来の詐欺罪では立件が難しいケースに備え、ブロックチェーン技術を用いた詐欺や匿名化資金移動に対応した新しい刑法類型を創設する必要があります。
- 学校・社会人向けの「投資リテラシー」教育
- 被害状況を警察組織が簡略化し、知識人やエンジニアの導入、捜査権のハードル下げ
技術的アプローチ
- ウォレットの追跡ツールの国家的整備:国内の仮想通貨詐欺資金の流れをリアルタイムで可視化するためのツール開発と利用環境整備が求められます。
- AIによる詐欺パターンの自動検知:SNS・LINE・YouTubeなどの詐欺誘導文言を自動検知・警告するアルゴリズムの開発と運用。
まとめ:行動が被害者を減らす
仮想通貨詐欺は「放っておけば消える」問題ではありません。
警察も、司法も、そして政治家も。今、行動しなければ、被害者は増え続け、社会は壊れ続けます。
法改正、教育、テクノロジーの連携で、この“振り込め詐欺2.0”を終わらせるために、一刻も早い法改正が急務です。